成人式を終えたばかりの女性からメールが来た。

「いつも突然ですみません。今週の土曜日はあいていますか?」

メールに気付いたのが遅かったので、電話をかけた。しかし出ないので、メールで「土曜日は、午後ならあけられます」と返事をした。

数時間後に電話がかかってきて、「残念でした。急ですみません」という。

何のことか訊ねた。

先日「母べえ」の試写会に応募したら当たって、みてきたのだそうだ。そこでまた抽選があって、今度は吉永小百合の劇場挨拶がある映画館の切符が手に入ったという。

「土曜日の10時からなので一緒に行ってもらえないかと思ったのですが、急な話では無理でしたね。」


普段ならあいているのにと、本当に残念な思いだった。

生(なま)小百合は、50年近く前に彼女が通っていた高校の駅の近くでちらりと見かけたきり、見たことがない。


実家に帰っている妻から電話があったのでその話をした。

一緒に残念がってくれるかと思ったら、「彼女は私よりも年上ですよ。私を見ていればいいじゃないですか。」と、冷ややかなコメント。

無理やりスケジュールを動かそうかと、その直前までまだ未練がましく考えていたのだけれど、その一言で、それも諦めた。


私を誘ってくれた女性は、「私が今まで観た映画で一番感動しました」という。

そうか。

せめて日を変えて、劇場に映画を見に行こうと思った。