利殖や運用に関する電話が頻繁にかかってくる。

そういうことに全く興味や関心を持たずに過ごしてきたので、そう答えると、電話を断るための口実と思われて、相手は粘る。

お金を増やすことに興味がないはずはないと言われる。

幸運にも、まじめに働いていてさえいたらとりあえず食べるだけは保障されるという環境だったから、本当にそういうことには関心を持たなかった。


妻が少し株を始めた。

やってみると面白いし、経済の見方が変わったという。いろいろ解説してくれる。なるほど、私が学んだ頃の高校の教科書に書いてあった経済の見方とは、だいぶ違った視点で見ている。

このところ凹んでいる。その表情を見ていると面白い。

それでも私には興味も関心も出てこない。


その私が、妻の見ているテレビの経済番組や市況報道の画面を少し注意してみる瞬間が出てきた。

それは円相場。

この間のパリ旅行で使わなかったユーロが数百ユーロ手元にある。

なんとなく自由になるお金を持っていたくて、妻に言わずに別に用意して持っていったのだ。

結局使わなかったけどドゴール空港でも成田空港でも円に換えるチャンスがなくて、そのまま私のかばんの奥に眠っている。

そのほかに妻が私に預けたもののうち、1万円分ほどが残っている。妻はそれを知っていて、この間どんどん円高が進んでいるので、早く換えればよかったのにと笑っている。

私は、じっと円安の波が来るのを待っている。

一月半前に成田で円を交換したときは手数料を入れると、1ユーロ170円に近かった。

今の交換レートは150円の少し上。

手数料を引かれたら150円くらいになるかもしれない。


別に今すぐ換える必要がないというだけのことなのだけれど、初めて経済市況に興味が出てきたのがおかしくて、大事に取ってある。