振り返ってみると、穏やかな一日だった。

夕食を食べた後、居間にいてじっとしていた。静かで一人きりだった。いずれこんな時間が毎日続くようになるのかと思った。


午前中は、妻が留守の日の常で、洗濯をし、朝食を食べ、録画したHDの整理をし、書斎に入った。少しネットを見たりブログの読み書きをしていたら、昼が来た。昼食を食べて少しのんびりテレビを見て、それから仕事をしようとしていたら娘から電話があった。長い電話でいろいろ話したが、前回の電話とは逆に、私がいくつかの「指導」を受けてしまった。妻へのいたわりの言葉をどのようにかけるべきかを彼女は繰り返し私に諭した。私は少しむかついたが、結局、「分かったよ。できるだけそうする」と答えさせられた。


夕方、いつものスナックのママが昼間別のところで開いている喫茶店に行った。産直販店に付属した店で、5時には閉めるので、4時頃行くと片付け物をしながら暇な感じで四方山話になる。


この間から彼女はしきりと結婚をしたいといっている。

離婚をし、子どもも独り立ちしていて、今は寝るときだけ家に戻る娘はいるが、事実上一人暮らしのようなものだそうだ。ずっとこれではさびしいものね、と言う。


スナックの常連客で感じのいい人がいて、喫茶店の経営にも少し助言をくれたり手伝ってくれたりして、この間はじめて食事に誘われたのだという。


「面倒なことはもうたくさんなんだけど、たまには気のあった男性と食事もいいかなと思って行ったの。それだけだし、何にも起こってはいないのだけど、それに、これからどうするのとなれば、相手は家庭もあるし。」


だけど、だけどの話でいかにも煮え切らない。第一何のために私に話すのかという問題もある。

そこで、「いくつになっても人を好きになれるってすばらしいと思う。いろんな問題もあるだろうし、どうしろなんて言えないけど、そんな風に恥ずかしがったりすることだけは不要だと思うよ」と話しておいた。

うれしそうに「壬生さんに洗脳されちゃいそうだな」などといっている。


結局今日は娘に説教され、スナックのママの、まだ蕾のコイバナに助言を与えて終わった。

奇妙な一日だった。

一人で居間にじっとしながらそんなことを考えた。