私はプロ野球・東京ヤクルトスワローズのファンです。
…と言うと、多くの人はこう聞いてきます。

「え、誰推し?村上?山田?
それともつば九郎?」

私の答えはちょっと違います。

「つばみ」です。



そう。
村上でもない。
山田でもない。
球団の大人気マスコット「つば九郎」でもない。
スワローズの、どこか控えめなもう一人のマスコット、つばみ。

正直言うと、現地でつばみのタオルを掲げてる人は、ほとんどいません。
つばみ専用のユニフォーム「283」を着ている人なんて、神宮で一度も見たことがない。
まさに“目立たない存在”です。

でも私は、その「控えめさ」「一歩下がった立ち位置」で、いつも丁寧にお辞儀をして、子供たちにそっと寄り添う姿に心惹かれました。

ちょこちょこ頑張ってる小柄な後ろ姿がめちゃくちゃ可愛い。
気づけば、完全に「つばみ単推し」になっていたんです。

よく考えると、どんな世界にもこの「一色の推し方」ってありますよね。

たとえばアイドルグループV6。
全体が好きな人もいれば、岡田だけ!っていう一点突破のファンもいる。

競馬なら、
普通は馬のソダシを応援する。あるいは武豊というジョッキーに熱狂する。
でも私のスタイルはむしろ、「この調教師さんの育成哲学が好きなんだよなぁ」っていう感覚に近い

あるいはアニメ好きの人に「鬼滅の刃好きなんですよ」って言われても、
私なら「作品そのものより、鬼頭明里さんが演じる禰豆子と声のマッチングが最高!」みたいな、ものすごく局所的なポイントで好きになる感覚に近いと思います。

好きのポイントって人によって全然違います。

実はこういう独自の推し方はすごく重要な武器になります。

世の中、みんなが同じ人を推して、同じものを買って、同じ話題で盛り上がる。
その中で、「いや、自分はこっちなんだ」って言える人って、目立たなくても印象に残りませんか?

なぜなら、
「あなたにしか語れない言葉」を持っているから。

人間はオリジナリティを感じたときにその人に惹かれます。
誰かが私に、
「なんでつばみが好きなんですか?」
って聞いてきたとき、こう答えます。

あの小柄で、ちょこちょこ一生懸命動いてる姿がなんか…見てて癒されるんです。

これ、めちゃくちゃ個人的な理由ですが、
「個人的すぎる理由」こそが、共感を呼んだり、面白がられたり、興味を持たれたりします。

この考え方はファン活動だけじゃなく、実はどんな業界にも応用できます。

ビジネスでも、仕事でも、人付き合いでも、発信でも。

「誰も気づいてないけど、ここが好きなんです」って語れる場所を、自分の中に持ってる人は強い。

そこにしかない熱があって、
そこにしかない目線があって、
そこにしかない言葉がある。

最近だと、三宅香帆さんの『「好き」を言語化する技術』という本があります。
ほんとにその通りで、「好き」って掘り下げれば掘り下げるほど、人を惹きつける力を持ちます。

私の「つばみ単推し」もまだ語りきれてない「好き」がきっとたくさんあります。その奥行きがまた面白い。

誰にでもウケる必要はない。「この熱さは俺しか語れないぜ!」というのが、推し活の醍醐味だと思います。

今日も神宮で、
ピンクのつばみタオルを掲げて、
“自分にしか語れない推し”を静かに貫いていきます。


ささやま次郎