アメリカの大統領選挙戦を見て
11月にアメリカの次の大統領が誕生する今年は選挙イヤー。 日本でも自民党の総裁選が行われる。アメリカの選挙戦は、毎回見て思うが、とにかく盛り上がり方がすごい。もはやエンターテイメント。国の代表を決めるのに、あんなにも国民が熱狂するのは、ある意味羨ましく思う。それだけ、政治に関心を寄せている証拠でもある。日本はどうだろう?どうせ誰がやっても同じだと、大きな関心は感じられない。そのくせ、こいつは嫌だとか、メディアも含め、ネガティブキャンペーンは積極的だ。初の女性大統領誕生なるか?オバマ大統領が選挙に立候補した時、誰も彼がなるとは思わなかった。それは黒人の血が入っているから。しかも知名度もそれほどでもなく、議員4年目とかだった気がする。自分もCNNとネットの速報を交互に見ながら、オバマが大統領になるか期待しながら見ていた。そして、見事黒人の大統領が誕生した。今回もその雰囲気を十分に漂わせているカマラ・ハリス副大統領。もちろん初の女性大統領という歴史を塗り替える瞬間になるかもしれない期待は大きい。バイデン大統領が候補を辞退したのは、多くの人がホッとした。彼は、オバマ政権のもとで副大統領として仕事をこなしたが、いかんせん高齢で発言も所作も不安だらけだった。トランプ前大統領が銃撃されるバイデン大統領がTVの画面に映るたびに、不安しか感じなくなっていた矢先、トランプ前大統領が撃たれた。右耳を貫通するという状況に誰もがショックを受けた。少し頭を動かしていたら、間違いなく死んでいただろう。しかし、トランプ前大統領は、耳から血を流しながらも、立ち上がり、支持者に向けて拳を振り上げた。彼はどういう時にどういう振る舞いが正解なのかよく知っている。これを機に、トランプ氏の支持が急に上がり始める。これぞアメリカ!と言った、映画のような展開だ。自分はトランプ氏は好きでも嫌いでもないが、これは風向きが変わったと思ったし、彼がまた大統領になる可能性が高まったと思った。カマラ・ハリス氏の出馬が決まるしかし、そこで終わらないのがアメリカ。今度は民主党が、バイデンの撤退を発表し、ハリス副大統領の出馬を決める。これまで目立った仕事をしてこなかったハリス氏が、果たして、銃撃事件から生還したトランプ氏を倒せるのか?当初は不安の声が多かったように思うが、高齢者のバイデンよりは良いという人も多かった。そもそも、バイデン氏もトランプ氏も、あまりにも高齢過ぎないか?ずっと思っていた。あれだけ人口の多いアメリカで、なぜに立候補者がこの二人の高齢者だけなんだろう?といつも疑問だった。もちろん、アメリカの選挙は資金集めが重要だし、党内での支持基盤も重要だ。知名度、経験、資金、財界からの支持を集めようと思えば、出馬できる人が限られてくる。これまでにも、若い政治家が、次の候補になるかもと頑張っていたが、皆脱落していく。この点では、トランプ氏はビジネスマンの才能を発揮してくる。彼はれっきとしたビジネスマン。いまだに政治家のイメージが薄いし、4年間でやってきたこともビジネスマンの思考だった気がする。そして、数々のスキャンダルにも関わらず、支持者はあまり減らなかった。アメリカ南部の貧しい白人支持者トランプ氏の支持者は、大金持ちのビジネスマンか、貧しい白人のアメリカ人たちで、両極端だ。この2つのカテゴリ層は、相容れないが、トランプ支持という点では結束する。それは、それぞれ別の不満や要求を満たしてくれるからだ。ビリオネアのような金持ち集団は、大統領がトランプになれば、ビジネスがしやすいと思っている。税金も下がるかもしれない。国内経済は、アメリカファーストでやってくれるだろう。一方で、貧しい白人たちは、メキシコから来る不法移民の排除や農家などの保護、保守的な考え方で、トランプの差別的な発言に反応し、彼らのフラストレーションを汲んでくれる存在だ。日頃の不満をトランプの過激な発言が溜飲を下げる。トランプの発言を聞いてスッキリする。メキシコとの国境に壁をつくり、乗り越えるものは撃てばいい。とにかく、感情に任せて支持をしている。経済政策がうまくいかなくて、自分たちが貧乏なままでも、トランプが不法外国人を排除してくれたら、それで気持ちが落ち着く。およそ、政治には関心がないのかもしれないと思うくらい、単純だ。ハリス支持は中間層それとは逆に、アメリカの中間層、ホワイトカラーの人たちには、ハリスが魅力的に映る。ハリス氏も、中間層に向けて経済政策をしていくと発表した。オバマが作ってトランプが壊してしまった、健康保険制度も見直し、さらにいいものを作るつもりでいる。なぜ日本人はトランプ支持が多いのか?日本でもアメリカの選挙は話題になっているが、メディアの傾向はハリス氏を推しているように見えて、一般の人たちはトランプを推しているように見える。様々なコメント欄でも、トランプが支持を得ているのはなぜなのか?そもそも、一般の日本人には、誰がアメリカの大統領になろうとおよそ関係のない話だ。アメリカの会社とビジネスをしている人や、向こうに住んでいる人ならもちろん他人事ではない。でも、日本を一歩も出たことがないような日本人がなぜトランプ支持で湧くのか理解ができない。おそらく過去の首相との関係や、日本も保守派が与党ということもあるだろう。映画やエンターテイメント感覚で、アメリカの選挙戦を見ている気がしてならない。欧州ではハリス氏を望んでいるその背景には、日本人が欧州や中東を含めた世界情勢を把握していないということがあるだろう。専門家なら自分で情報を取りに行って色々知っているだろうが、日本国内では中東や欧州の情勢はほとんど報道されない。されるのは事件やテロ関連ばかり。現在も継続中のウクライナとロシアの戦争。そして、イスラエルとハマスの戦闘。イスラム国のテロの危険性など、ものすごく複雑で闇が深い問題に、欧州は常に直面している。そこにアメリカがどう関わるかが大事で、誰が大統領になるかも重要になる。ハリス氏の外交実績は知らないが、周りにつくブレーンはおそらくかなり優秀な人材が配置されると思う。トランプなら戦争を止められるとか、どのような根拠で一般の日本人が発言しているのか不思議でならないが、そんな保証はない。もちろん、ハリス氏が大統領でもそう簡単にはいかないだろう。それほど、欧州と中東の問題は複雑である。アメリカの国内失業率が上昇して、経済もボロボロ。不法移民は後をたたず、どんどん入って来る状況になると、戦争を始める。アメリカは国内の経済状況が落ち込むと戦争を起こす傾向にあるので、世界的に見ても悪影響が出る。トランプは、そうした状況をよく見ていて、国民がフラストレーションを溜めていることを察知し、わざと過激な発言をする。国民の負の感情を利用して、大統領の座についたようなものだと言われるし、彼のパフォーマンスやスキャンダルを見る限り、今でもそれは変わらない。彼はあくまでビジネスマンだ。政治家にはやはり思えない。これまでの外交も、ビジネスマン流のやり方でこなしてきたし、トランプ政権の時期に戦争を始めなかったのも、ビジネス的に得をしないからだろう。故安倍元首相との関係を見れば、どこかの大企業のお偉いさんのごとく、仲良くゴルフ三昧だったのは、記憶に新しい。そのやり方では、欧州や中東の問題を解決できるキーマンとはなり得ない。ドイツもフランスも右傾化そんな欧州でも、ウクライナや中東で戦争が起きてからは、国民が不安になり右傾化が進んでいる。ドイツでは極右政党のAfdが第2党となる異常事態が起きている。ほとんどナチスドイツを思い起こさせるような、ドイツ人が最も好まない過去の汚点とも言える思想の政党が第2党になるなんて、数年前は想像もしなかった。これもアメリカと同じ構図で、経済状況が落ち込み、貧困が増えると、白人のドイツ人は、不満を抱える。我々の仕事が奪われているのは、移民のせいだと。移民を即排除しろ!自分たちが貧しいのは、あいつらのせいだ。叩きのめしろ! と街に繰り出して、実際に移民に襲いかかる。Afdの支持者層は、そんな人たちで溢れる。それを党の上層部は利用していて、全くトランプと同じだ。外国人として暮らせばわかる自分も欧州に暮らして長い。露骨な差別もあるし、これまで色々な経験をしてきた。自分の国に住んでいれば、経験しなかった差別の問題は、やはり根が深い。日本でも移民が増えているし、街のコンビニの店員はアジア人だらけで、よく思っていない年齢層も多い。自分がその立場だったら、ということは考えずに、移民を毛嫌いするが、過激な外国人排除を支持している日本人は、一度海外での生活を経験してみて欲しいものだ。海外で長く暮らしていると、どうしても名前や見た目で、「外国人」のレッテルを貼られる。相手の言語を完璧に理解していてもだ。他の人とは同等に扱われないので、もやもやした気持ちが残ることもある。移民や差別問題を語るには、自分がその立場になってからにして欲しいとも思う。それは欧州の人にも言える。もちろん誰もが経験することではないから難しいが、せめてそういう立場を想像して議論してほしい。海外旅行だけでは、なかなか難しいと思うが、旅行だけでもその国の人の反応が肌で感じられるわけで、そこからもし自分がこの国に住んでいたらと想像してほしい。大袈裟だが、普段の生活の他人に対する配慮に欠けた態度が、宗教を通じて戦争につながっている気がする。