フルカワJAZZ道場 -33ページ目

フルカワJAZZ道場

お気に入りの1枚を探すために

彼女はそれまで普通の主婦でした。
まさか台所で鼻歌を唄っただけで、
別の人生が訪れようとは思わなかった
でしょう。
その日の来客を迎えるまでは。
そして”新しい”音楽は生まれていった!
今回のテーマは「昔ボサ・今ボサ」です。



 
昔ボサ

「イパネマの娘」

アストラッド・ジルベルト
”ザ・エッセンシャル・アストラッド・ジルベルト”より  
ボサノバを代表する女性歌手ですが、スタン・ゲッツとの共演によりジャズ・ファンにもなじみの深い1人です。
冒頭の逸話は彼女のデビューの時の話で、ギタリストで歌手の夫ジョアン・ジルベルトの元に訪れたプロデューサーが、彼女を見初めてこの歌を唄わせたのでした。1963年にジョアンがポルトガル語で唄い、アストラッドが英語詞で歌い、スタンゲッツが演奏したこの曲は大ヒットし、ボサノバの中でも一番知られている曲といってもいいほどです。
ボサノバとは”新しい傾向”という意味で、元はブラジル音楽のサンバ・カンソンをルーツにしています。しかし、スロー・テンポで絶望感を唄うサンバ・カンソンに馴染めない若者たちは、ジャズやアメリカのポピュラー音楽と融合させて、ボサノバを作ったのだといいます。それがアメリカのジャズ・メンに広がったのは、ブラジルが一時軍事体制に入って、多くのミュージシャンがニューヨークへ移住したからでした。
曲の内容としては、イパネマの海岸をサンバのリズムで歩く、若く日焼けした美しい娘に思いをよせる歌で、日本でいったら「モンロー・ウォーク」のような曲です。(海岸と歩く姿がミソ)

 





 
昔ボサ

「ハイ・インセンシティブ」

笠井紀美子
”キミコ・カサイ・インパースン/フューチャーリング・オリバー・ネルソン”より  
このアルバムは1973年東京郵便貯金ホールでのリサイタルのライブ盤で、原信夫とシャープス&フラッツのジャズ・オーケストラに、シャンブル・サンフォニエットというストリングス・オーケストラ加えた編成になっています。笠井紀美子はこれが初めてのソロ・リサイタルで、かなり力を入れていたようです。このリサイタル
は2部構成で、録音されているのは2部だけのようです。
最初は他の曲ユー・ド・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥを目当てに買ったのですが、ストリングスをバックにしたこの曲を耳にして、いいようのない夏の終わりの寂しさを感じました。開演日が9月だったからでしょうか、カーニバルの後のような、やるせない胸を打つ歌となっています。
ちなみにタイトルのハイ・インセンシティブとは、”お馬鹿さん”という意味だそうです。

 





 
今ボサ

「ウェーブ」

ハリー・アレン
”アイ・キャン・シー・フォーエバー”より  
はじまりから夏の海辺を思い起こさせるアレンジです。
アルバムの1曲目を1日のはじまりにたとえるなら、夜明けからようやく日が差し始めた浜辺で、まだ淡くきらきらと輝く水面の光を浴びて砂浜を歩きながら、いい1日が始まる予感がしている、そんなイメージです。
ハリー・アレンはどちらかというとボサノバのレパートリーの方が多いプレイヤーです。かといってポピュラーに流されているのでもなく、ジャズのスタンダード曲の方もきっちり素晴らしい演奏をしています。つまり両方の使い分けを楽しんでいるようです。
このアルバムは前に紹介したスタンダードのアルバムに比べると演奏に幾分かリラックスが感じられるようです。むやみに音を付け足すのではなく、彼独自のタイム感覚とメロディーラインで新しい息吹を注ぎ込んでいるようです。
サックス・プレイヤーは、4ビート・ジャズとフュージョンを使い分ける人が多くいますが、メインストリームのジャズと、ボサノバの使い分けもアリかなあ
と、ハリー・アレンを聞いていて思うのでした。

 



 
今ボサ

「マシュケナダ」

安井さち子
”マイ・ウィル"より  
この曲は有名すぎて、ヴォーカルだと同じようなイメージがつきまとってしまいますが、おもいきってインストルメンタルに
した方が、その演奏者の色がでるようです。楽しく力強い音に心が弾むようなサウンドで、耳慣れた曲が生まれ変わったようです。
アルバム一枚の中には何曲かは素晴らしいが、他の曲はちょっとイマイチというものが少なくないです。だけどこのアルバム自体演奏者の表現力の勝ちでどの曲も一聴の価値があります。有名曲か自作曲かを知らなくても、十二分に楽しめる作品になっています。
自作曲では「ザッツ・ザ・スピリッツ!」がオススメ。

 

ボサノバも日本人に受け入れられて、
今では一年中かかっているようです。
少し冬のスイカのみたいですね。
あと少し本当の旬を楽しみましょう。