マイ・フェイバリット・ソング・ブックB |
| ~ジャズは曲を知れば楽しくなる~ |
Aを書いてから2年以上がたちました。
やはり多くの曲から1曲に絞るのは無理があるんですね。
今回は”3曲”チョイスしてご紹介します。
「BODY & SOUL(ボディ・アンド・ソウル)」 |
ファブリッツィオ・ボッソ・ニュー・プロジェクト |
| ”ブラック・スピリット~フレディー・ハバートに捧げる”より |
|
この曲のルーツ |
作詞:ロバート・ソウア、エドワード・ヘイマン、フランク・アイトン
作曲:ジョニー・グリーン
レヴュー「3人ひと群れ」 |
 |
ジャズの面白さの一つにイントロ部分をヘッド・アレンジ(イントロ部分をアレンジする)することがあります。いくら個性が違うといえど、同じメロディーを演奏するのですから、それだけで変化をつけるのは難しい。そこで導入部をいかに凝るかで、曲のできが全然変わってきます。一例をあげると、マイルス・デイヴィスがそうでしょう。では曲の紹介に入ります。
1930年の作品で美しいスロー・バラードです。日本では「身も心も」という邦題の方が有名かもしれません。どちらかというと、サックス・プレイヤーが多く好んで演奏しているように思われます。しかし、はやりすたりがあるのか、最近は以前ほど取り上げられていないのではと思います。
最近では新人のファブリッツィオ・ボッソが取り上げています。彼はイタリア人のトランペッターで、大注目のグループ「ハイ・ファイブ」のメンバーであります。
曲の美しい旋律を更にふくらまして引用しながら、歌を歌うようにイントロを奏でます。曲の本編に入ると、これ以上ないほど音を大切にためながら、曲の世界観を作り上げています。また新しいカバーの名曲が生まれた気がします。
帯にはフレディー・捧ぐとありますが、聞いてみるとアドリブの飛び跳ね方、ハーフバルブの使い方、一気に低音から高音に駆け上がるアドリブの構成の仕方がウィントン・マルサリスの方に近いかもしれません。いろんなトランペッターから影響を受けているということでしょか。 |
「BLUE BOSSA(ブルー・ボッサ)」 |
エディ・ヒギンズ・トリオ |
| ”美しすぎるあなた”より |
|
 |
折からのボサノバ・ブームの再燃によって、最近脚光を浴び始めた曲があります。
ケニー・ドーハム作の「ブルー・ボッサ」です。この曲はケニー・ドーハムのリーダー作ではなく、ジョー・ヘンダーソン(テナー・サックス)のリーダー作「ページ・ワン」に入っています。洋の東西、若手、ベテランを問わず好まれて、取り上げられることが多くなりました。
哀愁を帯びたボサノバ調の曲で、原曲の印象が強いため、トランペット、サックスなど管楽器入りのカルテット(4人)、クインテット(5人)の編成がよく見られますが、面白いところでは、予想外にピアノ・トリオの演奏も増えていることです。
おススメは、エディ・ヒギンズ・トリオからの一曲。彼はスローなバラードを演奏すると、一聴そのくつろいだ曲調からカクテル・ピアノ(バー・ラウンジで演奏されるピアノ)のように思われがちですが、一転ミディアム・テンポ以上になると強力にスウィングします。そのギャップに思わず引き込まれ、聞いているほうも自然と体が揺れ、のめりこんでいきます。選曲も秀逸でで、アルバム一枚聞き終えると、次は別のアルバムを聞いてみたいと思えるほどです。ヴィーナス・レコードからたくさんの枚数がリリースされているのはわかるというものです。(ちなみにヴィーナス・レコードはアートな写真を使ったジャケットが多い)
彼は1932年マセチューセッツ州ケンブリッジの生まれ。惜しくも2009年亡くなりましたが、このカバーは2006年なので、74歳の時のもの。なんという若々しく力強い演奏かと驚きです。 |
「BEMSHA SWING(ベムシャ・スウィング)」 |
セロニアス・モンク |
| ”セロニアス・モンク・イン・イタリー”より |
|
 |
実は最後の一曲の選曲に苦労しました。なるべく違うタイプの曲にしたかったので、大胆にもセロにアス・モンクにしました。となると、カバーではその曲の良さが伝わらないで(それだけモンクは別格ということ)、ここだけはオリジナルです。モンク嫌いの人は多いでしょう。自分自身そうでした。
不協和音でできたメロディー、奇妙なシンコペーション、少しテンポをずらしたようなバッキングのどれをとっても、近づきがたいものがあります。しかし「ストレート・ノー・チェイサー」や「ブルー・モンク」など良い曲がたくさんあるのです。
今回は聞きやすい方の曲になります。曲名だけは知っている方もいらしゃるでしょう。
「Cジャム・ブルース」のように、ほぼ同じフレーズを繰り返しているだけの曲ですが、また逆にこれだけの音数でジャズが出来上がるという驚きの曲でもあります。
ライブ盤を選んだのは、アルバムの垣根なくモンクの代表曲が聞けることもありますし、この「ベムシャ・スウィング」のスタジオ録音の方の「ブリリアント・コーナー」より聞きやすいからです。
スタジオ録音の方は、アーニー・ヘンリー(アルト・サックス)、ソニー・ロリンズ(テナー・サックス)、クラーク・テリー(トランペット)の参加という豪華版、一見ベストに思えますが、大勢がこの不協和音のようなメロディーを演奏するとなると、音が多すぎてガシャガシャした印象で、少しうるさすぎる感があるのです。モンクになじみがない人なら、もう結構となるかも。むしろ、ピアノトリオ+テナー・サックスというカルテットの方が断然聞きやすい。テナーのチャーリー・ラウズのクリアでくせのない演奏も一役買っていると思います。シンプルなワン・ホーン(管楽器が一本のみ、後ピアノ・トリオ)の方がいいという典型だと思えます。 |
今回は最近発売(もしくは再発)された、
手に入れやすいものを中心に選びました。
今年はこれで終わりです。また来年会いましょう。 |