
おぼろげな記憶の断片をひもとくと、20数年前、他の大学のサークルに1人だけ女性のジャズトランペッターがいたように思います。その頃はまだアマもプロもジャズでは女性の管楽器奏者はほとんどいなかった。”ホーンは男のみ”という何か壁のようなものが確かにありました。
そして今ではジャズ聞く女性が増えたのか、女性のホーン・プレイヤーの活躍は目覚しくなっています。泥臭いはずのジャズが、華やかになってきました。
今回は趣向を変えて、「ウーマン・ウィズ・ザ・ホーン」です。
「砂とスカート」 |
矢野沙織(アルト・サックス) |
| ”サクラ・スタンプ”より |
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最近の日本の女性ホーン・プレイヤー人気の火付け役いいってもいいでしょう。デビュー当時まだ高校生で、チャーリー・パーカーに心酔している本格派として、かなり話題になりました。テレビの「
情熱大陸」で取り上げられた時、学校帰りにセーラー服姿のままでスタジオに入った光景は、なぜかその時流行った「スウィング・ガールズ」とダブって見えた記憶があります。時代の風が吹いていた
のでしょうか、あまり批判的な意見はなかったように思います。一聴すればその実力のすごさはわかることですが、ビュー前、ライブハウスに飛び入りでよくプレイするという、武者修行をしていたそうですから、知る人ぞ知る存在だったのでしょう。
男のベテラン・プレイヤーを相手にしてもひるむことなく、堂々とパワフルに渡り合います。スタンダードの選曲もよく、聞き入ってしまいますが、やはり彼女の最大の武器は”作曲”にあると思います。ラテン風の自作曲を聞いていると、ジャズはやっぱりオリジナル曲だなあと思ってしまうのです。聞き終えた後にいつまでも耳にのこるいい曲ばかりです。このアルバムもそうですが、オルガンを加えたサウンドに面白みがあり、ソウルフルで、さらなる飛翔が期待できます。
このアルバムはお気に入りの「スウィート・ラブ・オブ・マイン」が入っているのでスイセンしましたが、一押しは彼女の自作の「砂とスカート」のヴォーカル・バージョン(インストルメンタルは一つ前のセカンド・アルバムに入っています。)。彼女の曲に歌詞をつけたアレックス・キューバ・バンドのラテンどっぷりの歌がいい味出してます。それを受けた彼女のいきいきとしたサックス・ソロが、ジャズとラテンの切っても切れない絆と伝統を感じさせます。 |
「スターダスト」 |
市原ひかり(トランペット) |
| ”スターダスト”より |
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柔らかい音色でありながら、また時にはパッションのあふれたフレーズを次々と繰り出す。デビューはほとんど彼女の自作の曲によるフュージョンでした。やさしい日差しのような、のびのびとした曲調にいやされた人も多いでしょう。しかしセカンドはほぼストレートなモダン・ジャズという選曲。カーペンターズの曲を入れるところが今風といいましょうか。いきなり路線を本格的な方にかえるところ、かなり勇気があり大胆ともいえます。ジャズはやはり4ビートということろですか。
父親がプロのジャズドラマーで、血筋といいいたいところですが、以外にも大学まで吹奏楽でクラシックをやっていたそうで、クラシックの音楽大学に落ちて、ジャズ課のある音楽大学(洗足学園音楽大学)に入ったのがきっかけだというから、何が幸いするかわからない。やはり運命はジャズの”明るい表通り”につながっていたということでしょう。
そしてスイセン曲の入ったサード・アルバムです。
有名な「スターダスト」これは原曲を変える人はほとんどいません
。それをゆっくり目のテンポでイントロが始めて、まるで別の曲のようなメロディーを吹きます。メロディーパートの半分を受け持つベースの演奏でスターダストだとわかるような。そして途中小節数
を増やしているそうで、まだバースの部分というのにベースもアドリブを始めたりして、なかなか本編のメロディーにいきつかない。
少しやきもきした後にやっとあの美しいメロディー出てきます。待たされた分に値するくらい幸福感にみちたプレイです。例えれば、夜景を見ようと小高い丘に行ったら、まだ早くて日が暮れるまでし
ばらく待った後、ようやく夜のとばりが落ち始め、宵の明星がきらめき、そして満天の星々が輝く。ふと眼下を見ると空からこぼれ落ちた星屑のような街のあかりがまたたき、ほっとする幸福感に満ち
たそんなふわっとした演奏です。
全体を通してみるとアイデアに満ち溢れたアルバムです。これを聞くと、ジャズは楽しいなあ、やはりイントロが命だなあと思えるのです。昔のジャズが、その人の人生を全部背負ったような音楽とすれば、これは今風のしあわせを感じるジャズといえるのではないで
しょうか。 |
「トーイズ・ジャム」 |
小林香織(アルト・サックス) |
| ”グロウ”より |
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いいですねえ。マルタやスクエア、ナベサダにはまっていた自分には、ワン・ホーンのアルト・サックスで吹きまくる演奏はこたえられませんねえ。デビューアルバムではシャニースの曲をカバーするな
ど、音楽的な嗜好が広いようです。重い4ビートジャズをずっと聞いていたり、コテコテなソウル・ジャズを聞きすぎてもたれたりしたら、何を置いてもこれを聞きましょう。さわやかな気分になりま
す。そういった状態になくても、聞いていくうちに心が澄んで晴れ渡るような感じがします。フュージョンもやはり最後は楽器そのものの音、その人が奏でるメロディーが大切なのだとわかります。派
手に人工的に装飾された音楽はすぐ古くなり、シンプルなものほど不変だと思えるのです。曲のトラック数が進むたびに、どんどん気持ちが高揚して行き、楽しさでいっぱいになります。
彼女も前述の市原ひかりと同じ洗足学園音楽大学ジャズ科を卒業しています。子供の頃からピアノエレクトーンを習い、中学で吹奏楽部でフルートを演奏し、高校時代1年ぐらい音楽をやめていたが、
区民楽団のコンサートビデオのサックス奏者にあこがれて、アルト・サックスに転向したのでした。ジャズは高校三年生の時からでクラシックからジャズへという1人ですね。
ほとんどが自作の曲ですが、中にはビージーズの「愛はきらめきのなかに」なども演奏しており、なんかこういう曲がこれからのニュー・スタンダードになるのかなあと思ったりするのでした。
スイセンの曲は、聞き終わってもフレーズが頭の中でリフレインしているものを素直に選びました。 |
話は全然変わりますが、ギャオで「皆殺しのトランペット」を見ました。禁酒法時代のジャズ・バンドの話で、昔の映画過ぎて、かろうじて出演者のジャネット・リーとリー・マービンの名前がわかるくらいで、主人公のトランペッター役の人の名前は聞き覚えがありませんが、エラ・フィッツジェラルドやペギー・リーなどの歌手が出ていて、歌を披露します。
中でもペギーリー!!ジャケットの写真のまんまで感動します。(あたりまえか)ギャングのボスの愛人の役で、さらにアル中という難しい役を演じています。歌がさらにいい。落ち着いた語りかけるような歌い口にしびれます。
9月1日まで配信しているそうなので、興味のある人は見てみてください。 |