AMAZON出版、音の履歴書より

吉田兼好児シリーズ5音の履歴書: 青春篇 | 清岡隆二, 清岡隆二 |本 | 通販 | Amazon

ライブが終って仲間に会った。『オマエ、前の“ギブソン”はどうした?』、あれかよ、あれは重くて腰をやられてね、長年、使ってきたけど、『今日のは、“グレッチ”かい?』、うん・そう、これは軽くて腰にもこないし、年寄の爺さんには合ってるよ、この“グレッチ”は15年程前に、ロンドンのトッテンナムコートの楽器屋で、2日間かけて、叩いて・叩いて、やっと買ったよ、日本に帰ってから、東京田無のギター工房シャーウッドの職人・太田さんに頼んで、ギブソンのピックアップを入れたり、音色の柔らかいクロムの多いフレットに抜き代えたり、自分の奏法にあった加工をしてもらったよ、音は完全に自分好みに変わった、いいよ・実に、『処で、ハチキンさんは元気かい?、オマエの演奏する時は、いつも裏方だけど、』、そう・そう、肝心なのを・すっかり忘れていたよ、もう一人・裏方ね?、そうだよな~あ・ハチキンね~、俺も最近は、左眼は視力無し右耳は難聴よ、時々演奏に行っては打ち上げで・ちょっと呑んでは直ぐ酔っ払う、アルコールはとんと弱くなったよ、若い頃はこんなんじゃなかったけどね、打ち上げの後はお客さんに家まで車で送ってもらうだろう~、ここまでは好いがそのあとが悪いよ、少ない年金暮らしには大事なギャラだよ・それを貰う事をすっかり忘れたりして、後でハチキンに叱られたりするよ、最近は、ハチキンには助けられる事が多くなったよ、今じゃ・キレ者ハチキンは俺の懐刀みたいだよ、『処で、ハチキンさんとは何処で知り会ったのかい?』、まったく余計な事を訊くな・こいつは、まあ・でも、しようがないな、こいつはガキの頃からのチンだから・白状するかよ、ギターは・な、ロンドンで、叩いて・叩いて安く買ったけど、家のハチキンは・な、横浜中華街の慶福楼で、頭を下げて・頭を下げて、土下座して、やっとのことで、コチラが・値引きして値引きして安く買ってもらったのよ、あまり無理して買わせたから、ハチキン好みにさせられるし。いまだに・後遺症がキツイ、とくに古希を過ぎると。しかし確かにギターは軽くなった・腰にはこない。あ~あ、『しようがないよ・目は独眼・耳は独耳、身体はよろける』。