吉田兼好児の速筆エッセイ集「音の履歴書」より 酒豪の国の土佐 謝金は銘品)福辰の「酒盗」

◆酒盗(しゅとう)。魚の内臓の塩辛のことである・・。鰹の消費量で全国第一位の高知県は、鰹の藁焼きタタキや刺身などは食卓の定番であるが・しかし、鰹の内臓の塩辛「酒盗」・これは、南国土佐とは縁遠いご家庭や酒通でない御仁には、あまりに知られていないと思う・・。土佐の酒盗は、鰹の内臓をよく洗い、塩・柚子・はちみつ・みりん・日本酒・唐辛子などを加味し、半年から一年以上漬け込み・内臓に含まれる消化酵素によって発酵させ製品化する・・・。テレビ番組「吉田類の酒場放浪記」で知られる粋人“吉田類”を代表とする酒豪土佐人にとっては、“酒を盗む”類の珍味は、好みの銘酒同様に金に糸目をつけない“酒の肴”でもある。酒盗は、土佐藩第12代藩主山内豊資が名づけたという説もあるが。

◆高知市内で週一の割合で夜にBGMの弾き語りを演っていた・・場所は、土電『はりまや橋』電停から徒歩6分ほど、JR高知駅から徒歩10分、『蓮池町通』電停・ルイ・ヴィトンビルから追手筋を高知城に向かって徒歩2分の距離に在る「CADIZ」だった。さすがに観光の南国土佐、高知市街地は毎夜・毎夜、観光客でごった返していた・・イタリアン料理が売りモノ「CADIZ」は、ほとんどが県外の観光客で賑わっていた・・・ある夜、珍しく店のオーナーと顔見知りの地元商店街の連中がお客で来ていた・・・その中のお一人で中肉中背の紳士が、演奏が終わって楽器を仕舞っている僕に声をかけてきた・・・、商店街の夜祭での演奏の依頼だった・・・。「私の大好きな想い出のリクエストを演って下さいますか?!・ジャズでなくて、ポップスですが・・お礼は十分させて頂きますので!」・・・。リクエストは、"素顔のままで“・「JUST WAY YOU‘RE」だった・・。商店街の夜祭まで1ケ月、初めてのポップス曲をYOUTUBEで聴き込んで仕込んだ・「十分なお礼の一声」で、河原乞食・餓鬼根性 丸出しで練習した・・。その夜祭は、大橋通り商店街「土曜夜市」・ステージは、現在の「ひろめ市場」ちかくの特設会場だった・・・、スポンサーは商店街で古くから店を構える「福辰」。福辰は土佐の銘品「酒盗」の老舗である・・。

演奏が無事に終わり、依頼人の紳士:福辰の専務から「十分なお礼」を頂戴した・・・、どうやら僕を“呑兵衛土佐人と勘違いしたらしい?”、十分な「ギャラ・謝金」でなく、超高価な「酒盗の詰め合わせセット」だった・・。僕はゲコで日本酒が全くダメ・血圧も注意しなければならず、頂いた高価な酒盗セットを、他の食材に混ぜて・半年ほどかけて、なんとか平らげた・・・。

やはり、南国土佐の「酒盗」は、格別に美味だった・その酒盗は、謝金より高価だった・・・。

 

AMAZONのサイト

吉田兼好児音の履歴書: シリーズ4早春編 | 清岡隆二 |本 | 通販 | Amazon

速筆作家 吉田兼好児シリーズ 船の翼: 速筆作家吉田兼好児の世界 | 吉田兼好児 |本 | 通販 | Amazon