吉田兼好児のエッセイ集「船の翼」。処女航海前夜 港のマダムと瀬戸の花嫁達

その夜は、ピーターと二人で早々に夕食を済ませ、造船所事務所の秘書ヨーコさんが予約を入れていたその店にタクシーで向かった・運転手さんに訊く、“ああ・此処ね、この店はよく知っているよ・ママもきさくで良い方ですよ”、そうですか!それは好かった。15分足らずで店に到着。こぎれいなスナック、ドアーを開けるなり、“いらっしゃいませ、清岡さんにトレイシーさん・ですよね!?”・“先程・ヨ―コさんから電話がありましたよ”・“さあ~、どうぞ・どうぞ”、元気なママの声。“処で、お二人はどちらからお越しですか?”、ピーターは英国スコットランド・エディンバラ、僕は東京・土佐人ですが、“あ^らま~あ・坂本龍馬さんの土佐ですか!、この店のお客さんにも・土佐出身のとても良いお客様がいらっしゃいますよ、”・“ピーターさんは・ロマンスグレイの英国紳士!、ハンサムですね”、、ママがお店の若い女性達に声をかける、“ね~え貴女達もボンヤリとそこに立ってないで・此処に来て座りなさいよ、恥ずかしがらないで、少しは英語だって話せるんでしょう!?”。他にお客は誰も居ない・狭い店は二人で貸し切りである。ママも店の若い女性達も一緒になって、スコットランド紳士ピーターの歓迎パーティである。しばらくして・少し静かになった頃、ピーターがママに訊ねる、“マダム、アリア・マチDon’t you know her?”、誰それ?ピーター、”She’s a Japanese young girl but excellent singer”.、日本人の歌の上手い若い女性歌手だそうだよ、マリア・マチは、、何に?ピーター、あっそう・へえ~、東京で泊まったホテルオークラで、彼女を・テレビで観たの?、そう・云っているよ・ママ、“誰かしらね~?”、“ママ、それって・天地真理じゃないの?”、そうかもしれない!?、ねえ~・ちょっとちょっと、そこに天地真理のレコードあるでしょう・かけてみてよ。ドーナツ盤が回り始めた、ピーターが一緒にメディを口ずさんでいる、“マダム、マリア・マチ、ベリー・グッド”。“やっぱりね・天地真理ね!”・“小柳ルミ子ちゃんも・いいよね”。三原の夜は、深夜まで本当に若かった・・・艶っぽい粋な港町マダムとたくさんの瀬戸の花嫁達に出会った・・・早朝には、瀬戸内海を初めて船が走る・処女航海で翼が動く・・・・。

 

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