<洋服屋は馬狂い>人生スマイル 吉田兼好児の日記 府中の樫山

昭和40年第一次高度成長期・企業戦士と云われた時代も後半、やっと土曜日が隔週休日となった、『おい、今度の土曜休みは、ゴルフは止めて、府中に行こう!』、ロンドン支店勤務から東京本社に帰ってきた課長から声が掛かる、課長は府中競馬場の傍に住んでいる、此の頃、競馬はスーパーヒーロー<ハイセイコー>時代、本馬場でパドックを観るのが、サラリーマンの楽しみの一つとなっていた、『よっし、決まった、今度の土曜日は府中!おい皆、カミサンには上手く云っとけよ、勝ったら、手土産も家族に忘れるなよ、』、流石にイギリス・アスコット競馬場仕込みの課長は、云う事にも家族に気配りがある、『駄目だ今日は、良馬場で穴は出ないな、』、もうだいぶ前になるが、中山の大雨重馬場でダイシンボルガ―ドが逃げ切り、万馬券の大穴を出した、それを取った先輩が呟いている、“夢は二度ないよな”、『先行差馬でも買うか、だが、ちょっと待てよ、』、府中は4角周ったら、残りの直線は長い、そうか、次のレースは、テレビ馬が速いペースをつくるはずだ、テレビ馬とはスタートしてすぐに一番先頭で走る馬、テレビに真っ先に映る逃げ馬の事を云っている、テレビ馬は、稀に逃げ切り万馬券に絡む時もあるが、しかし今日は良馬場、この逃げ馬は3角を周った辺りで馬群に消える運命、『今度は、追込馬を買おう、樫山の馬がいるぜ、これで行こうか、』課長が呟いている、樫山とは同じ三井物産グループ会社である、イギリスから種馬を仕入れて、ごっそり競走馬も持っている、殆どの馬名に〈オンワード〉と付くから,すぐわかる、『親戚のよしみで樫山の馬を皆で買ってやろう、6番枠がオンワードだ、よっし、これで“GO”だ、』、レースが始まった、買った馬券に汗して応援だ!、4角過ぎて直線勝負、おいおい、まだ中断かよ、『いけ、いけ、もう少しだ、あ^あ、やっぱり、駄目か、4着だ!』、”残念”、『もう樫山の馬は買わん、洋服屋の商売は大丈夫かよ、まったく!』、、、こんな時代が懐かしい。

今日の高知新聞朝刊の記事は“格別”に好い!馬を愛した企業<オンワード>の記事が載っていた、若い頃府中で、ロンドン仕込みの今は亡き課長や先輩の笑顔を想いださせてくれる、楽しませてくれた馬達が眼に浮かぶ、おやおや!なんと、イゴッソーの同級生〈土佐高校36回〉・広内君が載っている

二つの祖国: 吉田兼好児の二つの祖国 | 清岡隆二 |本 | 通販 | Amazon