<最初の先生、ジャズ>吉田兼好児の速筆ライトノベル随筆集「音の履歴書」より 東京声専音楽学校 「夜間ジャズ科」 ジャズギターと唄の恩師:Tib Kamayatsu先生 最初に教わった曲;I’m singing in the rain

 

◆東京声専音楽学校(現:昭和音楽大学)「夜間ジャズ科」 に、ただジャズの歌い手になりたい一心で入学した・・この頃は、どの大学でも工学部卒は引く手あまた、とにかく・卒業さえすれば・・何があっても・食いはぐれはない!、そんな時代だった・・僕は、昼間は工学部の学生だったが、しかし・将来、会社に就職するなんぞまったく考えていなかった・・それよりなにより、まず・自分はプロの歌手を目指す!・・こんな思いで、この音楽学校ジャズ科に入学した・・。

 

音楽学校の校長先生は、なんと、自分と同郷・高知県出身だった・・・。入学時に下ハ川圭祐校長との面談があった、「君は高知の出身ですか!?、私も高知ですよ!、懐かしいですね~!土佐は!・・君は、高知の東部の安芸の方ですね~!、私は・高知市から近い伊野の先の佐川ですよ!・・、処で、この夜間ジャズ科は短期でプロのジャズ歌手を養成するのが目的です、君も立派なプロ歌手になることを願っていますよ!・同じ土佐人として、大変期待していますよ!」・・・・、「処で、君を担当する先生は大変素晴らしい方ですよ、頑張ってくださいね!」・・、ちょっと不安だったが本当に良かったよ!、下八川校長先生も土佐人だし・それに優しい素晴らしい音楽家だよ!・入学して本当に良かった!・・、なんだか急に・この学校に親しみをおぼえた・・、担当するジャズ科の先生は“いったい”誰だろう?、アメリカ人らしいけど日本語はちゃんと話せるだろう?、英語でやるのかな?・・・こんな思いの入学だった・・、授業が始まった・・僕を担当する教師は、日系アメリカ人の職業音楽家ジャズギター奏者で歌手のティ―ブカマヤツ先生だった・・・、先生が個人レッスン室に入ってきた・・、「校長から聴いたけどキミのお母さんのファミリーは、ロサンゼルスに住んでいる日系アメリカ移民だそうですね~!、ボクもそうだけど・・、アメリカのご家族は、皆さんお元気ですか?」、はい先生・・母の祖父母も弟も妹も、みんな元気にやっています、お蔭さまで・・、「処で、僕の個人授業はジャズギターの基本リズムと唄だが・・、キミはジャズ用リズムギターを持っているかね?」、いや~・先生、僕はそんなギターは持っていません・・持っているのはウクレレだけですが・・、「ウクレレでもいいけど・・・しかし、プロを目指すなら・・ギターがいいね!絶対に、それでは・・次のボクの授業に、キミが使うジャズ用リズムギターを買って持ってくるよ!」・・、先生、ありがとうございます!・・しかし、僕は貧乏学生でギターを買うお金はありませんが!・・「キミ、お金の事は心配しなくていいよ!、ギターショップは知り合いだし、ギターはボクからキミへのプレゼントだよ!」、えっ!・プレゼント!!・・そ・それは・・、どうもすみません!、先生!、ほんとうにありがとうございます!・・。ティーブ先生の初日の個人レッスンは、なんか・夢のような嬉しい話の時間で終わった・・・・。ティーブ先生の2回目の個人レッスン日がやってきた・・・・先生が、大きなケースを抱えてレッスン室に入ってきた・・・部屋に入るなり、すぐにケースを開け、新品のジャズ用リズムギターを取り出した・・・・、「キヨオカ君、ちょっと触ってみなさい!、キミへのプレゼントだから・・」、初めて見るそのギターは今まで見たことがない・すごい大きさだった・・、ボディの厚みもサイズもやけに大きい・・いかにも生音で響きそう~!、ネックは長く幅は狭く厚みは“がっしり”としていた・・。先生から言われるまま・・恐る恐るギターを抱いてみた・・・抱き心地はいいね!、しかし“デカイ”あまりにも“大きい”・・こんなのを弾くのか!?・・・、これがジャズ用リズムギターの印象だった・・・。「ストラップも買ってきたから長さを自分に合うように調整してくださいね、家に帰ってから・・」、ありがとうございます先生!、いろいろと何から何まで・・すみません!・・。「ギター弦のゲージはリズム用で普通よりは大きめを張ってあるよ、よくチェックしてね、取り換える時は・・」・・、しばらくして先生が・「それじゃボクが一曲ジャズを演ってみようか!?」・・・、先生!、お願いします!・・。ティーブ先生が・初めて生徒の僕に、演ってくれたジャズの曲・それは「I’m singing in the rain」だった・・、凄い!フォービートのリズムカッティング “ずん・ずん・ズン!・ズン!”と、深く“ブ厚い”・身体が浮きあがる様なリズムギターの響き、それに先生の楽しそうな“ノリノリ”の素晴らしい唄!、僕は聴き入った・・そーか!これが、プロが演るジャズか~!、と、感激もひとしおだった・・・。先生!、ほんとうに今夜は、ありがとうございました!・・・、帰りの電車の中、先生から頂いた大きなジャズ用リズムギターを抱えて“ルンルン”しながら・・・“I’m singing in the rain, just singin’ in the rain ”と、繰り返し巻き返し唄いながら・・“よっし!”僕も頑張るぞ!と、心で叫んでいた!・・・。

 

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