AMAZON出版本・吉田兼好児著速筆ライトノベル随筆「船の翼」より エディンバラ・再会と別れ 想い出

 

歩いて10分足らずで・そのパブに着いた・・・・・。

席はピーターがすでに予約済み、ありがとう・ね!何から何まで・ピーター、『ケン、このパブの経営者は元)ボクシングの世界チャンピオンだよ、地元では・ちょっとした有名人だよ、』、へ~え・そうかい!、『ケン、これがメニューだけど、何か食いたいものはあるかい?、』、これから皆で飲むからな、僕は軽めでいいよ、ピーターは?、『俺は、列車が到着する前に、とっくに家で家族と済ませてたよ、これからは、俺は飲む時間だよ、』、何だよ!そうかよ、それじゃ・メニューにある“シェフお勧め”スモークサーモン・サンドイッチとやらを食べるとしようか、『俺が注文してくるよ、飲みものはラガ―で好いかい?ケン、』、オーケー!それで、ありがとう・ピーター。“チェアーズ・ピーター”、『“チェアーズ・ケン、”エディンバラにようこそ!』、ありがとう・ピーター、このラガ―は美味いね、でも・ちょっとアルコール度が高い気もするが、7度だろうな?これは、また・このスモークサーモンは、美味いね~・最高だよ!ピーター。飲んだリ・食べたりですぐに時間は過ぎていく、ピーターが話し始める、『ケン!、スタビライザーにはお互い想い出は多いな、最初の船は忘れられない、特に瀬戸内海の試運転での出来事は・ね、あの船の処女航海に乗ったかい?ケン、』、乗ったさ!ピーター、ちょっと大シケに遭ったり・エンジンが止まって漂流したり、でも結構楽しかったよ・僕の故郷の土佐の海だったからね、『そうか、それは・それは、』、『おっ・会社の連中が来たよ!ケン、』、日本で見た顔だ!・殆どが≪船の翼≫のFlying Scotsmanだよ。『元気だったかい!?ケン、乾杯・乾杯!ケン、ウエルカム・エディンバラ!!』、右手にアルコール7度のラガ―・グラスのサイズは“パイン”(日本の大ジョッキーサイズ)、左手にスコッチウイスキーのダブルグラス、入れ替わり立ち替わり、連中がやって来ては、“ケン!乾杯・乾杯”である、そのうち、2時間程で、酔っ払って目が回り出した、何を喋っているのか・さっぱり自分でも分からない、そのうちバッタリとパブのソファーに倒れ込んだ。気がついたら、ホテルのベットで朝までぐっすり眠っていた。後で聴く処によると、ピ―タ―が抱きかけてホテルの部屋まで運んでくれたらしい。翌日はピーターの家を訪問、彼の奥さんや子供達と皆んなでエディンバラ城に行ったりして長い一日を楽しんだ。昼食も夕食も全部、ピーターの奥さんの手料理だった。素晴らしく美味しかった・本当に。素朴なスコットランドの心温まる家庭の料理だった・・・・。

 

あの日から・もう四十年が経ったよ。スコットランド紳士ピーターと苦楽を共にした翼付きの懐かしい船達は、今では皆な用済み廃船となったと聴く。世界を≪船の翼≫で飛び周ったFlying Scotsmanのピーター、君は今・どうしているんだい?、奥さんも家族も・皆な達者かい?、あの時・エディンバラ城で遊んだ君の可愛い子供達は、もう・オジサンやオバサンだね、もう一度会いたいね!ピーター、会ったら聴いてみたいね!“君のシルクの美声を”、もう一度・・・・・・・。

 

たしかに、右手にはアルコール7度のラ―ガ―・サイズは“パィン”、左手にはスコッチウイスキーのダブルグラス、これを交互に乾杯を20回もやれば・さすがに酒豪のイゴソーでも、意識朦朧。ピーター家族と休日を過ごした翌日の朝、エディンバラ始発のロンドン・キングスクロス駅行きの特別急行Flying Scotsmanに飛び乗る。わずか2日のエディンバラ滞在、しかし、イギリスからスコットランドの行きの列車の旅は長かった、僅か12時間だったが・・・・・・・。

 

南国土佐では大きく時は流れて、あれほど色香で旅人を惑わし咲き誇った紫陽花も、今では無残に枯茶色、涼風が運んで来る潮騒も子供の声にかき消されそうな海開きの季節。南国土佐は夏祭り・夜さ来い踊りの太鼓の響き、筆をギターに持ち替えて、明日は馴染みの海辺のカフェで、水平線を走る船を眺めてスローバラードのジャズを弾きます。

 

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