<酔えない土佐の花見>吉田兼好児の山郷スケッチ 鶯啼く花団子宴

 

「ね~・ちょっと聴こえない鳥の啼き声!・鶯じゃやないの?」、とハチキンが云う、そうだな・鶯だよ。散り花を眺めながら鶯の声を聴く、格別に好い。そう云えば、18歳に上京して60歳で故郷土佐に帰るまで、花見で・鶯どころか小鳥の鳴き声なんぞ聴いたことは一度もなかった。昔住んでいた家の近くに多摩川公園があった、此処は毎年春になると芋洗いの花見客が大騒ぎをしていた、声・声・声、五月蠅いの・なんの、どうして・こうまで酒飲んで大騒ぎするのか不思議でならなかった、公園の鳥だって五月蠅くて・きっと耳栓して何処かに隠れていただろうよ。それに比べて、やはり・故郷の花見は、実に静かである。此処香南市の山郷は何処にでも桜木がある、特に公園に行かずとも・この季節は毎日が花見である。家から徒歩で15分程の距離の裏山に、【桜の広場】と云う・花より団子酒宴処がある。そこで、今年最後の散り花でも観ようとハチキンと出かけた、ゴザを敷き・食べ物を広げ、そして・ビールで故郷の好き春に乾杯する、まだ色鮮やかな桜の花弁が無言で木の間をさ迷いながら、少し群れては・また離れ散っていく、そんな微風の中で清んだ鶯の啼き声を流れ聴く、桜に鶯啼くと云えば、何処となく風情を感じさせるが散花時の鶯の啼き声は、妙に・もの悲しい。若くして桜花の命の様に散って逝った幕末維新の熱血イゴッソー達、坂本龍馬・中岡慎太郎・武市半平太・擁護した清岡一族と野根山二十三烈士、自由民権運動の板垣退助・ライオン宰相浜口雄幸・・。鶯の啼き声が聴こえる土佐の花見は余りに静かすぎて何を飲んでも・酔えない。散花見は・・ノンアルコールビール龍馬1865でも飲むとする。

 

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