<長瀞旅情>吉田兼好児の速筆エッセイ集「音の履歴書」。旅する芸人 長瀞「とらや」の“手打ちそば” 

★僕の好きな曲:バディデフランコCooking The Blues

 

◆猛暑だった。熱かった夏の想い出が・・涼風を求め歩いた旅路に、まだくっきりと足跡を残して輝いている・・・。長瀞・川下り、水しぶきがまだ乾ききらずに点々と残るシャツ、ちょっと歩き疲れた駅への小道に、その店はあった・・・。黒塗りの壁板に白いペンキで無造作に書かかれた看板「とらやの手打ちそば」、店に入った・誰も客がいない!・・。旅の小道具のギターを店の隅に置く・・古民家造りの店内にそれとなく流れるジャズは、バディデフランコのCooking The Blues ?・・ゴキゲンな雰囲気、足でリズムを踏みながら・・久しぶりに旨いそばをすすっていると、修行僧のようなそば屋の親父さんが調理場の暖簾を開けて、のっそりと出てきた・・・お客さんはジャズギター弾きかい?、蕎麦を食い終わったら一曲でいいから、弾ってくれないかい?、唄えるかい?、・・いいですよ!・・それじゃ、弾きがたりで・・、ひさしぶりにThese Foolish Things Remind Me of Youを演ってみた・・。終わると親父が、私の故郷の銘酒だが・どうかね?、肴は田舎の仲間が送ってくれた‘’生の白エビ“だが・・・、美味いね~!これは格別に!・・、ところで親父さんは富山ですか!?、やはり、ね・・僕の親友も富山生まれで、ね!、今は、彼は母校の大学の教授をしているけど・・。長瀞・とらやのソバ・寡黙で優しい目をした親父さん・・・。蝉しぐれの長瀞は、涼しい・そして、熱い旅だった・・。

 

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