歌手,女優の加護亜依さんがジャズ・シンガーとしてデビュー作『AI KAGO meets JAZZ-The first door』(P-Vine)をリリースした。本誌7月号インタビュー取材のためにオフィスを訪れてくれた加護さんのお話の中から,誌面の都合で掲載しきれなかった興味深いコメントをここにご紹介します。
まず4月6日のBLOGでも触れましたが,MCで語っていたウラ拍~シンコペーションへの取り組みについて聞いてみました。
加護亜依さん(以下AK) ジャズを覚えたての頃にずらしながら歌ことが凄く難しいと思いました。J-ポップはリズムに入らなきゃいけないんですが,あえてそれをずらすっていうのは,この10年間やってきたことの正反対。“ずらし”がはまったときに,例えばゴルフで上手く打てたときに“パーン”となる,あの瞬間と同じ気持ちよさがあって。じゃあ,なんでもずらしてみようと,わざと90年代のJ-ポップとかをずらして歌っていくうちに生活の部分でもじらしちゃう。「言いたいけど言わない」みたいなじらしが出てきちゃったんです。
SJ ステージで拝見した加護さんは,ミュージカル女優のような存在感を示していました。これも歌手~女優として経験してきたキャリアが活かされているのでしょうか。
AK ジャズはどちらかというと女優業に似ていて,演技の仕方とか感情の入れ方なんかが,他のジャンルを歌っているときとは違うなって毎回思います。表現がすごい必要だなって。ジャズをやることで,逆に女優としてやるにあたって,こんな気持ちでやらなきゃな,と逆に思えるようになりました。
ミュージカルもあまり興味がなかったんですが,ジャズをやったことで,すごい大好きになっちゃって,映画でもミュージカル系を見ることが増えました。
SJ ステージでもう一つ印象的だったのはバンド・メンバーの爽快なドライブ感。全力で疾走していながら,加護さんの歌唱によりそうようなスタンスを貫いています。この相互の信頼感と絆を生み出してくれたメンバーとはどうやって出会われたんですか?
AK ジャズを教えていただいた先生のつながりです。ジェイコブ・コラーさんのピアノは本当に歌いやすくて愛を感じるんです。後ろにいるんですが,ピアノの音で支えてもらっている感じ。ジャズ・コンボってはじめてだったんですが,後ろに支えてくれているメンバーがいるって心強いなって思いますね。人間が歌うので毎回同じように正確には歌えないじゃないですか。でもちょっとしたニュアンスの変化にもすぐについてきてくれるんです。ベースの高道晴久さん,ドラムの二本松義史さんにも感謝です。
SJ MCの中で,ロスアンゼルス留学の際に出会った女性シンガーとのエピソードが心に残りました。詳しくお聞かせください。
AK マイケル・ジャクソンさんと『This is it』で共演していたジュディスさんという方です。日本人とアフリカ系アメリカ人のハーフの方で,小さい頃からいじめを受けていたそうです。でも,唯一好きだった歌を歌うことでそんな境遇を跳ね返し,自分を信じ,夢を信じ続けていたらマイケル・ジャクソンと仕事ができたという方なんです。その話しを聴いて,ライブを見に行ったんです。
ソウル・ジャズっていうのかな。ヒップホップ感もあるのにすごくジャズで,だけどブラックな感じもあったんです。とても面白い音楽で,大きな影響を受けました。ジュディスさんは座って歌うんですが,手がすごく綺麗で歌うときに手に感情を込めるんです。とっても強くて,手先からビームというかオーラが出ているような感じ。すごかった! 細かいことなんですけど,自分も歌うときに手先から表現できたらいいなと,勉強になりました」
(編集長・みもり)
*明日の後編に続く