バンクーバー五輪開会式でカナダ国歌を歌った女の子は誰? カナダの天才ジャズ・シンガー,ニッキー! | SwingJournalStaff(スイングジャーナル スタッフ)のブログ

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 2月に開催されたバンクーバー・オリンピックの開会式(写真)でカナダ国歌を歌った若き女性シンガーは誰? 開会式直後に,こんな話題がネットで流れた。
$SwingJournalStuffのブログ-ニッキー@バンクーバー

 このシンガーはニッキー(本名はニッキー・ヤノフスキー)。カナダのジャズ・シンガー,というかジャズの枠を弱冠16歳で軽々と飛び越え,今やカナダ国民的アイドルにのぼりつめたスター・シンガーなのです。
 ではここでジャズ的視点から,彼女の日本での足跡と素晴らしさをご紹介しましょう。
 2007年6月にリリースされたエラ・フィッツジェラルドへの新録音トリビュート作『ウイ・ラブ・エラ』(ユニバーサルミュージック)で,並みいる一流シンガーのなかでもひときわ注目を集めたのが,当時12歳のニッキ・ヤノフスキーが歌う<エア・メイル・スペシャル>でした(その後,ニッキ→ニッキーと改称)。
 2009年7月にはソロ・デビュー作『ニッキ・デビュー~エラに捧げるスイング』(同)をリリース。これまた13歳とは思えぬ(録音は2007年のため)歌唱を披露して,内外ジャズ・ファンから脚光を浴びました。昨年夏には「サッポロ・シティ・ジャズ~EZO Groove 2009」で初来日公演を果たし,その驚異的パフォーマンスで北海道のファンをノックアウトしたそうです。
 さらに札幌からの帰途,パークタワー東京にあるジャズ・クラブ“メロディ・ライン”で関係者のみショー・ケース・イベントを開催。わたくし,『ウイ・ラブ・エラ』での衝撃が忘れられず,他の仕事を放棄してリハーサルからベッタリはりつきました。ん,まぁ,凄いこと。このときは15歳でしたが,あまりの感動と興奮に,本誌09年9月号の編集後記でこう書きました・・・・・・・・・・『ウイ・ラブ・エラ』(07年)の中で,13歳にして驚くべき歌唱を披露していたニッキがついに日本上陸! リハーサルからショーケース・ライブまで全てを堪能した。ニッキを聴いて感じたのは,「凄い耳の持ち主なのでは」ということ。理由は15歳とは思えぬボキャブラリー。ナイアガラの滝の如き勢いで発せられる怒濤のフレイズには,お仕着せで詰め込まれた形跡は微塵も無い。恐らく一度聴いたボーカル曲は,自分の「うた」としてすぐ歌いこなせるはず。美空ひばりもきっとこんな少女だったのではなかろうか・・・・・。
 その秋に歌舞伎座で行われた「ギンザ・インターナショナル・ジャズ・フェスティバル2009」では,ソロを始め,渡辺貞夫,エリック・ミヤシロ・ビッグ・バンドらとの共演で,またまた驚くべき歌唱を披露。2009年のニッキは,まさにタイフーンのような勢いで感動の嵐を巻き起こしていったわけです。誰と共演しようが,ブレず,しかもバンドにのれる。このフェスでの歌唱を聴いて,この類い稀なる才能にあらためて脱帽しました。
 そして2010年,バンクーバーの開会式での歌唱・・・
 さらに4月21日は彼女のワールド・デビュー・アルバムがリリース。プロデューサーはグラミー賞33回ノミネートで14回受賞のフィル・ラモーン。ジャズ・ファンはもちろん,ポップス・ファンにも楽しめる多彩な内容に仕上がっています。ニッキー,ジェシー・ハリス,ロン・セクススミスらとの共作オリジナルに加え,ジャズの名スタンダード<A列車で行こう><ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド><明るい表通り><虹の彼方に>を収録。ラスト・ナンバーはカナダCTV:バンクーバー五輪キャンペーン・ソング<アイ・ビリーブ>。彼女は実力だけでなく,運も見方につけていますね。将来が楽しみです。   (編集長・みもり)