たぬきつねの第三話


ある日の夜、株式会社たぬきつねに訪問者が訪れた

それはねずみだった


ねずみは唐突に話を始めた
「最近チーズを食べながらチーズを溶かしたチーズジュース
 を飲み始めたんでちゅ~
 ねずみはチーズしか食べないって決めつけられてきたのが
 窮屈でずっと合うものを探してきたんだけどやっぱり
 チーズでちゅ~ね」

「選択と集中って言葉もあることだし一つ仕掛けるか」
きつねはそう言って油あげをほおばった



月日は流れ、街の様子は一変した

両腕に時計をするお洒落なビジネスマン
右腕の時計には短針のみ、そして左腕の時計には長針だけ

道路を走っている高級車は右にも左にもハンドル付き

しまいにはネクタイを二本重ねてするサラリーマンや
ブランド鞄を両腕に持って歩く貴婦人も



一見無駄だと思うことをあえて行う美徳
それが浸透し始めてまた一つのトレンドとなった


その年の夏、株式会社たぬきつねは
株式会社たぬきつねずみへと社名変更した


SWHAT


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株式会社たぬきつねは「ピンチヒッター」というサービスで
徐々に売上をあげていった

たぬきの右脳ときつねの左脳を活かし
世の中にあるなかなか売上があがらない商品の
ネーミングを変えプチブームを生み
ヒット商品をプロデュースしていった


またたぬきのひょんな一言でこんな商品も生まれた
「僕は感情を表現するのがどうも苦手なりよ
 それに一生懸命表現しても僕がたぬきっていうことで
 みんな化かされる騙されるんじゃないかって疑うなりよ」

「確かに俺もきつねだからって警戒する奴らが多いな
 おまえはいつもツンとしていて何考えているかわからん
 とか言う奴もいるし」


『ここみみ(cocomimi)』はこうして誕生した

たぬきときつねの心の声を聞いて欲しい
という想いが形になり製品化されていった

帽子の前の部分に小さな画面が付いている『ここみみ帽子』
ネックレスや社員証のように首からぶら下げる『ここみん』
ネクタイに縦長く画面が表示される『ここみみタイ』

使用用途も様々で機能も日々進化していった


今ではポケットサイズの小さなリモコンで
帽子やネクタイに取り付けられた画面に表示される
言葉や絵文字を簡単に切り替えることができるようになり
『ここみみ』は人々の体の一部として完全に同化した

以下に最近多く見られる使用事例を書くと、
・洋服などのショッピング中にここみみ帽子に表示される
 「一人でゆっくり見ます。よろしければ~なんて声を
  かけないでね!」
・コンビニのレジに行く前に画面表示する「レシート不要!」
・サラリーマンやOLに大人気なのはここみん
 オフィスの中で忙しい時にスィッチONで「今は忙しい。
 相談は10分後にして。ごめんね!」

中にはこんな画面表示をする人も・・・
・街を歩きながら「恋人募集中!」



たぬきときつねの心の声を聞いて欲しいという想いから生まれた
『ここみみ』は今や社会現象となりつつある


「思った以上に人間ってストレス溜まってるなりね~
 表情が豊かで口もよく動くから羨ましいって思っていたけど
 意思疎通ができなくて大変なのは一緒なりね」

たぬきはきょとんとした愛苦しい表情で微笑んだ



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たぬきときつねの物語


たぬきは某広告代理店のサラリーマン
きつねは独立して間もない経営コンサルタント

二人は29年目になる長い付き合いだった


銀座の洒落たハワイアンレストランで
待ち合わせをしたその日はたぬきの誕生日だった

「気が付いたらもうこんな歳になってしまったなり。
 来る日も来る日もベルトコンベアーで流れてくる
 物を処理するように働き続けてな~んか疲れちゃったなり」

「世間では思考停止状態のおまえみたいな労働者を
 ベルコンワーカーって呼ぶらしいぜ」
きつねは銜えた煙草をふかしながら笑った

「な~んかわくわくドキドキして胸がきゅんきゅんするような
 おもしろ~いことないなりか」
たぬきはくりっとした目を丸めながら言った

「世の中おもしろいことなんか転がってないぜ
 そういうのは自分で創っていくんだよ」
きつねは切れ長な目をさらに鋭くさせて言った

「・・・」
たぬき寝入りなのかたぬきは目をつぶった

そしてしばらくいつもの沈黙が流れた


突然たぬきが叫んだ

「たぬきつねってどうなりか?」

「たぬきつね・・・なんじゃそりゃ」
きつねはけげんそうな顔をしてたぬきを見つめた

「僕達の新しい会社の名前なりよ
 株式会社たぬきつね
 グッドネーミングでしょ」
たぬきは誇らしげに言ってきつねのほうを見た

「何すんだよその会社」

「これから一緒に考えるなりよ♪」


見切り発車もいいとこだが
こんなひょんなきっかけで
株式会社たぬきつねは誕生した



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