キャラをいくつも持っているのは普通のことだった。
雪見でいた時も沢山いた。
でも華栞になってからはその全てを封印した。
怖かったから。
キャラは無数に作れた。雪見時代のキャラを新規のキャラに経由させ、それをまた新規の
キャラでまとめ、さらに新たなキャラで振り分けた。

雪見の時でもそうだけれど、相対する仲間と付き合うことはしなかった。
それをする人々は『媚び売り』と言われた。
雪見であろうと華栞であろうと媚び売りだけにはなりたくなかったから徹底した。
もともと雪見でいた時は極端にPKKを嫌っていたので、自分に嘘をついてまで媚びを売れるほど狡猾でなければ器用でもなかっただけだけど。


3人目の関わりがあった女性はそんな子だった。
望んでそうなったのか、それとも結果的にそうなったのか分からないけれど、相対する関係との付き合いがあった。

蒼と……そしてKくん。

Kくんの恋人としての゛桜花゛を使い、蒼の弟子としての゛フルムーン゛を使っていた。

PKとPKKの間にいる女。
それだけでも十分警戒するのに、加えてKの恋人で、且つ、蒼に恋愛感情をもっていた訳だから。




桜花は雪見に嫉妬した。
フルムーンは華栞に嫉妬した。

嫉妬をした側とされる側、どちらも同一人物。
嫉妬の渦中にいたのはPKとPKKの両極端。

Kくんには好かれて好きになってそして嫌いになった。

蒼は好きになったら好かれてた。

桜花はKくんの恋人で、フルムーンが蒼の弟子。

奇妙な因果関係。


雪見でいた時に受けた桜花からの嫉妬はすべて周りから聞いた話だった。
雪見なんていなくなればいいのに…。
そんなことも言っていたらしかった。
そりゃそうだろな。
一般人だったのがPKの恋人になり一気に有名になれた。
それなのに雪見が戻ってきたせいでまた自分の立場が危うくなった。

そんな桜花に心配しなくて済む様に、雪見は桜花に訴え続けたものだった。

Kくんに気持ちはないと。

Oくんと恋人になった後も桜花はまだ雪見に嫉妬をしていたようなのでOくんの話を囁いた。
Oくんと行動を共にしなくなって危機感を覚えたのか更に嫉妬が強くなったので蒼に好意を持っていることを囁いた。
彼女にとっては蒼もマズかったのに…。

まだかろうじて友好的関係を築いていた時に1度だけ、


『華栞さんって雪見さんでしょ?』


と聞かれた。
当然、白を切った。
桜花が信じたのかどうかは分からないけれど、その1回だけでそれ以降は聞かれなかった。
聞かれたのはもう1人いた。

面倒になったのでパソコンを2台使い、雪見を出し、アイテムを上げにきたかのように装い、蒼と華栞の前に姿を現した。
もちろん交互に喋るようなこともせず、あたかも別人が操っているようにみせた。
そして本来のPKの姿勢で華栞やその周りを威嚇した。
そして蒼には

「恋人が出来たんだね、ざんねーん」

、なんて軽口を叩き去っていかせた。
周りはなんとなくホッとしたように見えた。
そして華栞には

大丈夫だった?怖くなかった?

なんて声をかけてくれていた。

滑稽だと思ったけれどそれで周りが疑わなくなるのであれば構わなかった。

心配はひとつ消せた。
あとはうまいこと桜花の嫉妬から逃れることだけだった。
でもそんな簡単に奇妙な因果関係を断ち切ることは出来なかった。



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