あたしとじろーは場所を移した。


銀行に来てもらった。


狩り場ではあんな風にじろーは言ってくれたけど、

やっぱり無理だと思った。


じろーはただ人がさっていくことが寂しいんだと思った。



銀行に場所を移したのは、じろーにあげたい物があったから。

この時点、あたしはなにもない。
あるのはあたしの引退と共にもっていこうと決めた思い出の品だけだった。


絶対に誰にもあげない。
そう決めたのに、じろーにあげる気持ちになった。


最後の最後で夢を見せてくれたから。
誰よりも温かい言葉をくれたから。

あたしの悔しい気持ちや悲しい気持ちは、最後にじろーによってすくい上げられたから。


あたしは携帯のメールアドレスをじろーに教えた。

でもそれはじろーの言葉を信じたわけではなく、いくらかメールのやり取りがあり、やがてフェイドアウトするだろうと思ったから。


なぜあたしがじろーのコトバを信じないのかには原因と理由があった。


あたしはもう誰かに裏切られたりもがっかりもしたくなかった。
それから仮にじろーのコトバが本当だとしても、あたしとじろーは敵対関係にあるはずの立場だったから、障害があった。

あたしとじろーが恋人を組んだとしたら、おそらくPKからもPKKからも攻撃される対象となる。


一般人からは好奇の目に晒されることにもなるだろうと思った。

PKの領土から1度でているあたしにはもうあまり気にする必要はなかった。

ただじろーにPKKの領土を捨てる覚悟をしてまであたしを引き止めたいとは思えなかった。

そしてあたし自身、今のキャラを使い続けるのは厳しかった。
かと言って新しいキャラを作り、あたしがさゆだとバレるリスクを抱えながら、更に1から育てる気力があるのかも分らなかった。
そしてじろーとあまりにも差がありすぎるキャラになったあたしのそばにじろーがいれるとは思えなかった。


全てがじろーのコトバを信じられなくさせていたのだった。