こんにちは、美花です!

本日公開のこちらのお話は、2年ほど前にアメンバー様限定で公開したお話の加筆改訂版です。

タイトル通り、人魚姫なキョコたんと王子様敦賀さんのパラレル話です。

1話のみの公開以降、続きを書きたいと思いつつもなかなか書けないままでいたのですが、ここにコミック34巻の人魚姫中表紙がキタ!!

上半身裸(!)で、髪の毛だけでお胸を隠すセクシーキョコ姫と、生脚を海に浸した海賊スタイル黒髪敦賀さんに背中を押される形で、続きを書いてみようと思えるようになりました^^
(しかしキョコたん、そんな無防備なお姿で敦賀さんの前にいるのは大変危険だと思います。今のところは紳士モード状態のようですが、いつまでそれが持つのやら…むにゃうにゃ)

そこでまず、リハビリを兼ねつつ色々説明不足だった1話目を加筆。
2年も前の自分の文章を改めて見つめ直すのは精神的に結構大変でした…て、今もあんまり変化は見られないかも、ですがorz
訂正前のお話も限定のまま公開しておりますので、お暇でしたら読み比べてみて下さいませね…(自棄)

公開当初は限定にした方がいいかなと考えていたのですが、桃色加減もそれほどではないかなと思い直し、今回は通常公開に切り替えです。

2度目の公開ですが、既読の方も未読の方も、お楽しみ頂けたらいいなと思います。

ではでは、パラレルOKと言う方のみ、どうぞ~!

***



*人魚姫の恋*1



SIDE レン



紺色の夜空には瞬く星と、真円を描く満月が煌々と輝いておりました。

耳に聞こえてくるのは、寄せては返す波の音と、吹き抜ける春の緩やかな風の音だけ。
星々は煌びやかな宝石のように夜空に散らばり、淡く輝く満月は、柔らかな檸檬色の光を凪いだ海に静かに降り注いでおります。

とても穏やかな、春の宵でした。

そんな月明かりが照らし出す海岸を、その夜、レンは共も連れずに一人で歩いておりました。
一人分の足跡が、歩いた道筋を示すかのように砂の上に転々と残されています。

見上げれば、海に張り出した崖の上には明かりの灯された白亜の宮殿が臨めます。
ここは、そんな宮殿から直に通じている小さな砂浜。

この場にはレン以外の人影はありません。
宮殿は、この国の王家が所有する離宮なのです。砂浜も含めてこの近辺は、おいそれと人が立ち入れる場所ではありませんでした。

レンの足跡は、そんな宮殿から砂浜へと真っ直ぐ降りて来ています。

彼の父は、海の利権の殆どを手にする大国の王様でした。
王様の唯一の息子である彼はこの国の皇太子で、将来は父の跡を継いでこの国の国王となることが、生まれた時から既に決められておりました。

王になる為の他国での十年に渡る留学を終えたレンは、海辺の離宮へと居を移したばかりでした。

本当ならもっと早くにここに来るつもりでしたが、帰国を祝う王宮での様々な宴に追われ、漸く今夜、離宮に落ち着くことが出来たです。

一時も一人の時間のなかったここ何日かを思って、その理由にレンは堪らず苦笑を零してしまいます。

「相変わらずだなあ、うちの両親は」

国王とその王妃である両親の、久々に帰国した息子への手放しの歓迎はありがたかったのですが…いかんせん、愛が重すぎました。

いつまでも小さな子供のままではありません。

帰国から暫くの後、親孝行もこれくらいでいいだろうと判断したレンは、身の回りの世話をしてくれる数名の従者を連れて離宮へやって来ました。
細かい仕来りに捕らわれた王城の者もいない今、やっと気ままな夜の散歩にも自由に出られるようになったのです。

海からの弱い風に吹かれるままに髪を弄らせながら、レンは目的を持って足を進めます。
この離宮の傍には、レンにとって、懐かしく幸せな思い出の残る場所がありました。

そこは離宮の地下にも繋がる小さな洞窟。

幼い頃のレンは、離宮にやって来る度に、そんな小さな空間を自分のとっておきの場所にしておりました。
懐かしい記憶の残るその洞窟を、レンは今宵の散歩の行き先へと決めたのでした。

洞窟へ向かってゆっくりと歩いて行くレンは、装飾の一切ない白いシャツにズボンとブーツを身に着けています。

大国の王子にしては、随分と飾らない服装です。
けれど彼には、それで十分でした。

レンはそんなシンプルな服装でも自身を華美な印象に見せてしまうほど、優美で華やかな美貌の持ち主だったのです。

黒い髪と黒い瞳は、いかにも王子らしい夢のようなその面差しを鮮やかに際立たせています。
高い鼻梁、凛々しい眉は男らしさを、甘やかなカーブを描く唇は白皙の美貌に何ともいえない艶めかしさを与えていて…

見上げるような長身と、鍛えられた体躯がそこに加わり、その姿を見た者全ての心を惹きつけて止まない魅力を彼は有していたのです。

砂浜を踏み、洞窟の入り口を超え、レンはごつごつとした岩場へと足を踏み入れます。

洞窟は海へと繋がっていて、砂浜からの入り口の反対側には、離宮の地下に繋がる人工の階段が存在していました。
この洞窟の上に、レンが滞在する離宮が建てられているのです。

寄せては返す波の音が、人気のない洞窟内に大きく反響しています。
真夜中に近い時間でありながらも、海側から差し込む月の光に照らされて、洞窟は思うほど暗い場所ではありませんでした。

昼にこの場を訪れれば、日の光が帯となって入り込み、穏やかな隠れ家のような雰囲気を纏うのです。

離宮の傍を流れる川から海へと落ちる滝も、深い色を湛えた海の色も、記憶の中にある景色そのままでした。

何もかもが昔と変わらないその場所に、レンは瞳を細めます。
帰って来たのだという感覚が胸いっぱいに広がって…それと同時に、甘やかな切なさが心に広がります。

この場所は…

幼い頃別れたきりの、大切な初恋の少女との思い出の場所でもありました。

有耶無耶のまま別れてしまった少女との記憶は、今も色褪せることなく鮮明にレンの胸の中に残っています。
楽しかった日々はほんの少しの間のことでしたが、その日々は、レンにとっての何よりもの大切な宝物でした。

大人になり、様々な場所で多くの女性と知り合うようになっても…
少女と共にいる時のような、あの幸せな気持ちを感じることは一度だってありませんでした。

波の音は、洞窟の変わらぬ雰囲気は、その頃の記憶をレンに思い出させます。

…彼はいまだ、初恋の少女に心を捕らわれたままなのです。

今頃少女はどこにいるのでしょう。大人に成長した彼女も、今のレンと同じように過去の記憶を覚えていてくれているのでしょうか。

もしそうだったのなら、どれほど幸せなことでしょう。

そんなことを考えながら、岩場に打ち寄せては解けるように散る波の様子をレンが一人、眺めていたら…

ぱしゃりと。

これまで規則的に聞こえてきていた波の音の狭間に、不意に異質な音が混じり合いました。

それはまるで、何かが海面を叩いたかのような音。

なにか生き物がこの近くにいるのでしょうか。
確かにこの洞窟は深海にまで繋がり、時折驚くほど大きな魚が迷い込むこともあるのです。

浅瀬の岩肌に身をぶつけ、怪我をしなければいいけれど。

…そんなことを思ったレンが波間に目を凝らしていると…

月の光を受けてキラキラしたと輝きを見せる海面に、するりと姿を現すものがありました。

波間に紛れるようにして現れたそれは、淡いピンクの色をしたひれでした。

目を瞠るレンの眼前で、ひらひらとしたそれは波間にほんの少しの間現れ、またぱしゃりと言う水を弾く音と共に姿を消します。

月の光を浴び、その光の加減によってむらさきにも見える淡い色のひれ。

レンにはそのひれの色に見覚えがありました。

…驚いたレンは、慌てて岩場の淵まで走り寄って…

「…キョーコ…!?」

驚きを伴った声音で女性の名前を口にしました。

『キョーコ』。

それは、レンが今も心に想いを抱く、初恋の少女の名前でした。

レンの声は洞窟に反響して行き、波の音に紛れそのまま消えていきます。
大きく聞こえる波の音の中に、違う音を見つけようとレンは懸命に耳をそばだてます。

…永遠にも似た、僅かな間ののち…

ぱしゃりと、また水の音が聞こえました。

そして…

「…あなたは誰…?どうして、私の名前を知っているの…?」

そんな女の子の不思議そうな、密やかな声が聞こえて来て…
願うような想いで見つめていた波間から、水音と共にそろそろと姿を現す者がおりました。

そこにいたのは、長い栗色の髪を波間にゆらゆらと漂わせた1人の少女でした。

年の頃は17,8歳。
抜けるような白い肌と、大きな瞳を持った少女です。

海の中からレンを見上げる少女は、

「…私、あなたみたいに真っ黒な髪と瞳の人間は知らないわ…なのに、何故?あなたは、私の名前をどこで知ったの…?」

そう言って、困ったように綺麗な眉根を寄せて見せます。
彼女の顔には困惑と警戒、そしてほんの少しの驚きの表情が浮かんでいます。

焦げ茶色の大きな瞳、小さな鼻梁、花びらのような唇を持った面差しは愛らしく、不思議そうに小首を傾げる姿はとても可憐なものでした。

その顔を見た途端、レンはふわりと表情を綻ばせます。
押さえていた歓喜が、一気に表に出たようにその美貌が輝きました。

彼女の面差しは、10年前のレンの記憶の中のものとぴたりと重なったのです。

「キョーコ…!俺だよ、10年前ここで会ったクオンだ!ここで毎日会ったことを、君はもう忘れてしまった…?」

『クオン』はレンの聖名です。

王族のみが持つその名前には、密かに大きな力が宿っていました。
聖名を知られることは、その命を握られていることと同義の意味を持っているのです。

だからこの名は、通常は家族以外の相手には秘したまま、一生を過ごすこととなるのですが…

幼い頃のレンはその名前を、自分の名前としてキョーコへと告げていたのです。

岩場に膝を付き波間の少女の顔を覗き込むと、その言葉を聞いた彼女は更に瞳を大きく見開いて。

「…クオン…!?あなた、あのコーンなの!?嘘、どうして?あなた昔と全然違うわ、髪も瞳も、真っ黒じゃない…!」

幼い彼女は『クオン』の名前を聞き違い、その違いに気付いた後も、ずっとレンを『コーン』と呼んでいました。

少女の驚きの声に、レンは笑みを零します。

キョーコのそんな驚きは当然のものでした。なぜなら彼女とここで会っていた『クオン』は、今の姿とはまったくと言っていいほど違っていたのですから。

「昔、話をしただろう?俺は王の子供だと…王位を継ぐまで、姿を変え災いから身を隠すのが、古くからの慣わしなのだと。今の俺には、目晦ましの魔法がかけられているんだよ」

微笑んだレンが瞳を閉じ、その唇で短い呪文を唱えると…

黒髪が淡い金髪に、そして押し上げた瞼の奥の瞳が黒から碧へと、瞬く間に色を変えました。
闇の色にも似た黒を纏っていた『レン』は、煌びやかな色彩を持った『クオン』へと姿を変えたのです。

その姿を見るなり、目の前の少女が表情を輝かせます。

「…コーンだわ…!あなた、本当にコーンなのね?凄い、色が違うだけでこんなに印象が違うなんて!さっきのあなたは全然別人だったわ。またあなたに会えるなんて…ああ、どうしよう、とっても嬉しいわ…!」

彼女は満面の笑顔を浮かべ、嬉しげに細身の身体を捩ります。
それと同時に、彼女のひれが海面を叩いて小さな水飛沫を上げました。

ピンクのひれは月の光を浴びた海面から出たり入ったりを繰り返し、表情と一緒に喜びの色をレンに伝えてきます。


…そうなのです。

レンの初恋の少女であるキョーコは、人魚のお姫様だったのです。


出会いは10年前。

イルカを追ってこの洞窟の傍までやって来た際、浅瀬にある珊瑚で鱗に傷を負ってしまった彼女をレンが見つけ、誰にも内緒で治療をしたのが出会いのきっかけでした。

人魚はその魔力を持った歌声で人を惑わし海底へ引きずり込む恐ろしい魔物なのだと、海を生活の場所とする国の人々は恐れていましたが…

ひょんなことから知り合った人魚のキョーコは、無邪気で夢見がちな可愛らしい女の子で、人間の女の子となんら変わりのない少女でした。

レンとキョーコが親しくなり、互いに好意を寄せ合うようになるのはあっという間のことでした。

可愛い笑顔と真っ直ぐな信頼を向けてくれる彼女が、大人になっても今と変わらず自分の隣に、妃として傍にいてくれたなら…
毎日がどんなに幸せで楽しいだろうかと、その時既に、レンは考えておりました。

唐突の別れさえなければ、この10年、ずっと一緒にいられたはずでした。

「君は、どうして突然ここに来てくれなくなったの?探しに行こうにも君の住む場所はこの広い海の底で…何も出来なかった俺は、随分と切ない思いをしたんだよ」

子供の頃から今まで悲しい思いを抱えていた分、レンはほんの少しのあてつけも込めて…これまでずっと気になっていたことを、やや意地悪な言い方で問い掛けました。

2人が会えなくなった理由、それは、彼女が突然姿を消したことにあったのです。
以来、レンがどれほどこの洞窟を訪れても、彼女に会うことは一度もありませんでした。

キョーコの前髪を指先で払い、その頬を掌で包み彼女の顔を繁々と覗き込むと、キョーコが表情を曇らせます。

「ごめんなさい、コーン…あの時、あなたとここで会っていることをすぐ上の姉に見つかってしまったの。お母様に人間と必要以上に親しくなるなって怒られて、暫くの間、自分の部屋に閉じ込められてしまっていたの…」

そしてそう言った彼女は、そのまま拗ねた顔を作ります。

「でも私、何とか監視の目を盗んで抜け出して、ここに戻ってきたのよ。ちょっと、時間が掛かっちゃったけど…なのにあなたこそ、何度来てもここに顔を見せてくれなくて」

唇を尖らせ上目遣いに見上げられて、今度はレンが謝る番になってしまいます。

「ごめん、キョーコ。君をずっと待ちたかったのだけど…あの後、急に留学の話が進んでしまったんだ。俺はずっと国の外にいて、何日か前にやっとこの国に戻って来れたんだよ」

困ったように目線を伏せたレンは、苦しげにキョーコの顔を見つめます。

「そうだったのか…俺達、すれ違いをしていたんだな…」
「本当だわ…私、あなたに嫌われちゃったのかと思って、凄く悲しかったのよ」

そんなことを寂しそうな顔で言うキョーコの頬を撫でたレンは、そっと瞳を細めます。

10年ぶりに再会したキョーコは、可愛らしい女の子へと成長しておりました。

栗色の髪をオレンジ色の珊瑚の珠を連ねた髪飾りで飾った彼女は、綺麗に整えられた爪には華やかな飾りを施し、貝殻で出来たビキニでなだらかな丸みを描く胸元を覆っています。

そして、月の光りを受けた白い肌が、レンの心を誘うように艶かしく光り輝いて…

記憶の中の幼い少女は、その面影をしっかりと残したまま、すっかり1人の女性へと姿を変えていたのです。

子供の頃の恋心が、レンの中で新しい形となって大きく膨らんで行きます。

キョーコを愛しいと思う気持ちが、改めて、強く強く心の中に広がっていって。

もう二度と彼女を手放したくはない、そんな思いを、自分自身が驚くほどに急速に深めていきます。

「キョーコ…もう、君を離したくない。俺との昔の約束を、今も覚えてくれている…?」

悪戯っぽい色を浮かべた瞳でキョーコを見つめると、彼女の白い頬が夜目でも分かるほど薔薇色に染まります。

「…覚えているわ…あなた、私のことをお嫁さんにしてくれるのでしょう?」
「よかった、覚えていてくれて。その約束は、今も有効?」

キョーコの指先を掬うように持ち上げたレンは、その指先にくちづけながら瞳を覗いて囁きます。

「キョーコ。大人になったら、俺の妃になってくれますか…?」

幼い頃のレンは、人生初で最後になる予定のプロポーズの言葉を、キョーコに対して既に告げていたのです。

『大人になったら』

それは、まさに今なのだとレンは思います。
このタイミングで再会できた幸運を、レンは逃せません。

するとレンの目の前で、キョーコが嬉しそうに表情を綻ばせました。

「勿論よ!その為に、私はずっとあなたをここで待っていたんだから…私、あなたと会えなくなってからも、出来る限り毎晩ここに来ていたのよ。あなたに会いたくて」
「…キョーコ…」

そんな花のような可愛い笑顔に、レンの目線が釘付けになってしまいます。

そして、レンの表情が甘く蕩けます。
笑みを零すキョーコのそんな嬉しい物言いに、完全にその心を捕らえられてしまったのです。

海の中から手を伸ばしたキョーコが、レンの頬を指先で辿ります。

「ああ、大人になってもあなたはやっぱり素敵…!花嫁になるのなら、あなたじゃなきゃイヤだってずっと思っていたの!」

幸せそうに微笑んだキョーコは、そして…

「ねえねえ、コーン!私と一緒に海の底に行ってみない?海の底は素敵なところよ、そこで私と子供を作りましょう?」

華やいだ声でそう言われて、レンは虚を突かれます。

「…海の底?」

キョーコの言葉は嬉しい言葉ばかりですが…

想定とはかなり違う台詞も、彼女が口にした物の中に含まれていたのです。

「子供を作ることは物凄く大賛成だけど…待ってキョーコ、俺が海の底の君のところに行くとなると、問題がたくさん出てくるよ。人間の俺は、海の底では生きられないからね」
「そうなのよねえ、人間の男は海の底に引きずり込むとすぐに死んでしまうって、姉様方が嘆いているわ。残念な話ね」

瞳を翳らせたキョーコは、それでもすぐに唇を笑みの形に引き上げます。

「でもね、これが人魚の恋なのよ。人間の男と恋をして、そのお相手の身も心も食べ尽くしてこそ、やっと一人前の人魚姫になれるの!素敵な話でしょう?私、この冬には18歳になるのよ。大人になるのには、とってもいいタイミングの再会だったと思うわ」

ふふっと微笑むキョーコは、可愛らしい仕草で口元に指先を押し当てます。

…綺麗に磨かれた長い爪は鋭く煌いて、真珠のようなちいさな歯はきらりと光って…

その爪で切り裂かれ、その歯で頭から愛しい少女にばりばりと食べられる自分を想像して、レンは頭を横に振ります。

キョーコに食べられその血肉になる、それはそれで新しい愛の形かもしれませんが…
どうせなら、2人共にいられる幸せな未来を思い描きたいと、強く思います。

「それに…食べるのは、やっぱり俺の専門にさせて貰いたいな…」
「? コーン、それはどういう意味?」

きょとんと自分を見上げてくるキョーコに対し、笑みを深めたレンは緩く首を横に振って見せて。

「なんでもないよ、キョーコ…君を、なんとしてでも俺の妻にしようと改めて思っただけ。君にまた会えて嬉しいよ。もう二度と、俺の傍を離れないで」
「きゃ…やだもう、コーンたら…」

額に唇を押し当てると、キョーコの頬がまた鮮やかに色付きます。

過激なことを口にしつつも、小さなことにも真っ赤になる彼女の初心な様子にレンは表情を緩めます。


今後について、自分達には長い長い話し合いが必要だと強く感じながら…



レンは、何はともあれキョーコとの幸せな再会の夜をしっかりと楽しもうと。


「キョーコ…今も変わらず、君を愛してるよ」


ほっそりとした彼女の身体を優しく引き寄せて…その唇に、柔らかなくちづけを落としたのでした。




*2につづく*