身体が重い 寝苦しい夜を越え 仕方ない朝が
またやって来た
慣れない作業はいつまでも本気になれない
その作業を馬鹿にしている為
効率的な方法を考えたりせず
嫌々やっているため
見ていて気分が悪いのだろう
誰も話かけてはこない
フミヤは 長野県にある普通高校を卒業し
憧れの都会で何者かになる!と上京
人間関係でつまずき すぐ挫折して
実家の近くにあった輸入代理店でバイトをしていた 給料はさほどではなかったが
職場は 遅刻しても怒らない 優しい社長
たまにキャバクラなどに連れて行ってくれる
営業マン
無口だけど美人の事務員
陽気な留学生バイト
(フミヤと同じ立場)
少人数の職場は居心地が良かった
やる仕事は 淡々とした作業だか
社長が誉め上手だったので それなりにやる気が出たし 働く環境としてまずまずだった
辞めたくなかったが ある日突然
会社倒産となり 仕事を探してあるく日々だった
甘えん坊な26才
ある程度ちやほやしてもらわないと
やる気が出ない
世間はそんな 甘いはずもなく
生まれもった才能やこれといった特技もない
フミヤは
職を転々とし 知り合いなどの紹介で
築地市場で魚の仕分け作業をしていた
『 おい! 早くしろ!! 』
『 急げ!! 時間ねぇぞ!! 』
『 しっかり確実にやれ! 』
『 間違えたら 責任とらせるぞ!』
『 違う 立てだ 横だ! 』
『○@.!!? : あ?、あぁーだ こーだ!』
荒々しい声でひたすら煽られる
『くそ!どっちなんだょ! 早く確実にって 』
確かにそうである 確実にするなら
ゆっくり丁寧 だろう しかし 時間がない
敵は生物(なまもの)である
トラックで運ばれたばかりなので それなりに冷えているが、朝早くとはいえ 真夏の気温は
魚には耐え難い しかも現場(店舗)まで配達するトラックの運転手が その仕分けを今か今かと
目の前で待っている
運転手からすると 早く出発しないと
道が込み合ってくる →
店舗の開店時間に間に合わないと その責任が
ドライバーにのし掛かる
店舗の発注の商品が届かないとなると大事となる
バイヤーが市場で競り落とし 市場に届き
魚屋チェーンが 配送業者へ委託
さらに配送業者が 個人ドライバーに委託
すなわち 個人事業主たちの集まりのような場所では ミスをカバーするようなシステムはなく
個人の責任が常につきまとう
バイヤーは旬を見抜き 店舗の利益を計算
(安くて良いものと 売れる物を仕入れる)
配送業者は 店舗振り分けを的確にこなし
ドライバーはガソリンや高速代金など計算しながら 安全に商品を現場に時間までに届ける
積み込みの順番などもしっかりあり
道が悪くても商品が崩れないように
(発泡スチロールが壊れても買い取りとなる)
段ボールが濡れてもダメ
店舗の責任者が確認する順番も効率的に考えたり
シンプルな作業だが 頭をしっかり使わないと
やりきれないし
ミスがあると 仕事がなくなるだけではなく
損失も背負うこととなる
どんなに温厚な人であっても
その責任の前では 厳しく荒くなるのだろう
そんな重圧のなか
責任感のかけらもないゆとり世代と
夢も希望もあまり持たない悟り世代の
間の世代 どちらでもない
曖昧な感じのフミヤが珍しく耐えている
嫌なら 辞めればいい
難しいなら 逃げればいい
それでもなんとかなる
フミヤはいつもそんな感じだったのだが
何を言われても ひたすら耐えて
ひたすら作業をけだるくこなす
まるで
弱みを握られて逃げられないような
ひたすら耐えているだけの状態