並び屋さんのバイトも慣れてきた
慣れると言っても ただ指定された場所へ行き
だらだらと時間を潰し 並び屋仲間と適当なことを話し スマホでゲームをする
抽選でくじ引きをして 商品ゲットした時は
ちょっと誇らしくさえある
やりがいとまでは言えないが 
運も実力のうち 
何一つとりえがある訳でもない フミヤにとっては 人から誉められた記憶があまりないので
天職 なのでは?とすら思えてきた

並び屋の中村さんから誉められたり

プレミア物をゲットした時なんかは 
さらに上司?に当たる 
転売屋の人からも
じきじきに誉められた❗
中村さんから連絡が来て
一杯おごってくれると聞いて
指定された場所にやって来たら

古びた酒屋の隅にある 頼りないテーブルに
ワンカップがおかれていて 缶詰などがいくつか無造作に置いてある

いわゆる角打ちと言うやつ 
最近のちょっとコジャレたレトロ立ち飲みとは違って  本当に燻し銀の雰囲気だ


『 いやー やるね!キミ これは本当に抽選確率が高くて 中村氏から 並び屋界に期待の新人現る!! って聞いてたけど  なかなかな腕だねぇ! まぁ 一杯やんなぁ✨ 』

転売屋と聞いて
若い今風の流行りに敏感な裏社に属していそうな人ではなく  

60歳くらい 中村さんとそっくりな体型 
小太り 
よくある大型の紳士服店などの
入り口近くのワゴンで 
売れ残り商品投げ売りされて 
そのなかでも売れ残ってまとめ売りされてそうな

微妙で地味なデザインのポロシャツ
(無地なら良かったのに 変なデザイン)

ジーンズなはずだけど デニム生地に近い
ズボン 
ベルトはしておらずお腹が苦しそうだか腰のあたりにゴムになっていて伸びきっている感じ


昔の学校の先生のような上だけ黒フチの老眼鏡
(レンズの下はフチがない)

中村さんもそうだが、
元締めとかのイメージではなく 借金に困って
名義貸してる人って思える


転売屋は みんなから 隊長❗と呼ばれていた
なんの隊の 隊長なのかわからないが
本名などは当然のように謎
きっと誰かが言い出したのだろう 

あだ名とは 
久しい間とかだけに発生するのではなく 
どう呼んでいいかわからない場合にも
都合よくなる為に発生することもある
隊長の場合もきっと そうなのだろう


隊長と中村さんはなんだか似ていて
 親子なのでは? 
と少し思えるがきっちり他人である事を
紹介された時に告げられた

いつも聞かれるのだろう

そんな
隊長から誉められたのだが、
 気をよくしたフミヤだった

思い出せる限り 
誉められることはなく 
人なつっこいから老人とかからは可愛がられるが
社会に出てからは 特に風あたりがきつく

ダメ出しをされるとすぐ凹み
なるべく あたりさわりなく すごす

親や先輩 友人などの 心配からくる
言葉さえも 

うるさい小言として処理してきたのだった

次第に距離を置くことによって 
うっすらとした人間関係の中ですごす

期待されることもなく

誉められることもない

自信もない 

尊敬や憧れのかけらもない隊長からの
誉め言葉だったが  

コンクリートジャングルで

渇ききったフミヤには すごくしみた

隊長がなんだかすごくいい人に思えた


隊長から
『 あのさぁ キミ 並び屋の空いた時にさぁ
 
軍手落とし拾い やってみないか? 』




『 ( ̄□ ̄;)!! 軍手落とし拾い 』

フミヤは思い出した 

去年くらいだろうか 
地元の立ち飲みで知り合った不動産会社の人
会社は神奈川県にあるのだけど リゾート系の
開発か何かで出張中らしく 暇潰しに
キャバクラに行きたい と言っていたので
友達の彼女(なつみ)が働くお店へ案内したら
そのまま何件かおごってくれて 仲良くなった

その不動産会社の人 一見暴力団の幹部の様にも見えるし 警察官の上のほうの人にも見える
四角い顔 パシッと着こなしたスーツ

ただ 話しをしだすと 気さくな人で

面白おじさん と言った感じ の人

その人とキャバクラやらスナックなど
何件もハシゴして かなり酒もまわり
もう明け方だろうって頃
面白おじさんが 急に真顔になって語りはじめた

『 助スケさん !
(何故かはわからないけど付けられたあだ名) 

もしもおめえさんが、東京にくることがあったとしても 
(酔いがまわるにつれ何故か江戸っ子口調)



理由を探すような仕事は 受けてはいけないぞ! 

都会  …  あっ❗ 

コンクリートジャングルジムにはワナがいっぱい
(何故か言い直した)  


助すけさんよー!

コンクリートジャングルジム … にゃぁ
(自分で言って気にいったらしい)

きおつけるんだぜぇ 』

『理由を探す仕事?
ってなんでございますん? 』
(フミヤもつられて江戸っ子口調まがい)

『 す ,スケ助さん (もはや言いたいだけ)

そ、そりゃー ぁ あのほら  アレよ

軍手をかたほうだけ落とす仕事とか 
 またはそれを拾うほうとか 』

『 軍手ですかぃ? 意味がさっぱりわからないんでございますね 』

(フミヤもエセ江戸っ子口調が気にいった)

『 そう これは求人に出てたやつで 』
そう言いながら スマホの画面にある
写真を見せてきた



このように 普通っぽく出てやがるが!
内容が理解できない

こちとらぁ この理由を考えちまうと
 眠れなくって 本当困る💦
頭の中 こーぐるぐる🌀  … な!
あの歌のチョコレートディスコみたいな
フレーズがずーと ! 』

面白おじさんは 話し途中で はっ とした顔で

『 助すけさん やい 
(今度はじいさんのようにシワガレた声で)

今の話しは忘れておくのじゃ 』

『 へ ? あぁはい 』
フミヤは素直に何も考えず忘れる事にした
このあとの記憶はすっかりなく 
気がつくと家で寝ていた



それを急に思い出した



軍手を落とし拾い 仕事


隊長が真剣な表情で語り出す


空間の隙間というか …


そうだな
道路とかでたまに見かけるだろう 
 かたほうだけの軍手 
あれをヒョイっと 持ち上げて 
腰のあたりに現れる 空間のポケットみたいな
場所ね
そこに入れるだけ  

慣れてくると 次第に意味がわかってくる


後を追ってくる(意味)影が
スピードを増して追ってくる

いつだって あぁーもうダメってところで
先輩が さらっと助ける

助けながらヒントになるような会話をする


この仕事は 意味がわかってしまったら
ストップそこまで! で強制終了

後ろが つっかえているのだ
未経験 興味津々の顔で 
おぼつかない動きで
不思議そうに見ている間だけが 

 旬 なのだ

知ってしまうと 今度は先輩として
後輩をサポートすることに集中する

『 キミはその 旬をやってみるのは
どうだろう? 』


なんだか奇妙な話しだ
怪しげなバイトだし
理由がわからないし

酔って話したとはいえ面白おじさんの忠告も
あり 

拒否することもできたはずだった

だけど 隊長には 
社会に出て唯一自分を認めてもらっている

断って この場の空気が悪くなっても嫌だったので 
フミヤは そのバイトをやってみることにした