とめどなく襲いかかるフラッシュに目がくらみ 
思わず眉をひそめる

新聞記者やリポーターに囲まれ  
空調の行き届いたホテルの一室とは思えないほど
その部屋は、熱気に包まれていた

その青年は
真っ青なスーツ 
首をすっぽりと覆うパリッとした
長い襟のシャツ  
銀縁のメガネには
無理やり上品に仕立てたチェーン
髪はキチッと7〃3 に分けられているが
誠実なイメージは、ほど遠く

胡散臭い

ペテン師 

と言ったほうがピッタリくるだろう

悪魔👿を見た!って人はあまりいないだろうが
悪魔のような顔は 誰もが思いつくのではないだろうか? 表情 雰囲気 などから察しがつくと
いうか 本能的なもので 理解できる

その怪しい青年の言葉を 
今や日本だけではなく世界中が注目していた

青年の横には  冷静な面持ちで座る女性がいた

同じく襟が高く まっ白なシャツ 
袖が手を隠しきれるほど長く
(途中切れ込みが入っていて手✋が出せる様になっているデザイン)

艶のある黒髪は
江戸時代あたりのお姫様のような
イメージのカットがなされ 
清楚かつ したたかな印象
切れ長の瞳 からはその企みは読み取れない

青年の耳元で彼女がそっとささやく

 『 …… …    …    』

その瞬間 彼の表情が凍りついた



事の始まりは 4年前

地方都市にある小さな会社
輸入代理店の仕事で 
簡単に言うと
金属加工やプラスチック部品など
海外に工場を持たない 中小企業を相手に
代わりに取引をする業務をしている   

その日は
倉庫 兼
 オフィスの隅で会議がおこなわれていた 


会議と言っても社長も含め従業員アルバイト合わせて5人だか 
みな真剣な表情
考えていると言うより 悩んでいるような 
重い空気

1人事務員を担当している女の子がうつむいて
涙を必死にこらえている様子


原因は  山積みの段ボールだった
正確には その中にある 製品
合金で出来た四角い箱
厚みがあり ずっしりと重い 
表面は無表情な鉄の色 
接続部分に わずかだがカードが一枚入る隙間が
あるくらいで
その他はピッタリとくっついている

発注ミスである

もともとは 高級な缶詰用にと 依頼され
発注したのだが  届いた物が これ
当然 依頼された会社は引き取らず 
発注先の工場は 言わた通りの物ですと
交渉の余地はなく
買い取りをする他なかったのだ

『 あの …  私が悪いので  私親に頼んで コレを買い取ります。 』
事務員の チハル が切り出した

『いやいや 発注ミスは会社のミス ちゃんとチェックをしなかった私にも責任がある。』

社長は そうは言ったものの 
会社にはソレの支払いをして乗り切る体力がない

『 俺 給料 この箱で良いです 』
そう切り出したのは営業マンの
ヤスヒコだった

会社はもう信用がなく
一番のお得意様に逃げられてしまい
請け負う工場もまた同じく 
解散する他なかった

チハル と ヤスヒコ の他アルバイトの 
文也と シンガポールからの留学生 ポマイ
は この箱を給料代わりに持ってそれぞれ家に帰ろうとしたが かなりの量である,しかも重い


責任を感じていたのだろう
チハルが貯金を切り崩して
文也とポマイから
その箱を 給料相当の現金で買い取った 
当然チハルの部屋に入る量ではなく 
会社倉庫をそのまま 個人名義で契約
大家は家賃さえ払ってくれればとすんなり承諾してくれた。


『 チハルさん これ売ってみようよ‼』

ヤスヒコがアイデアがある訳ではないがチハルを
元気ずける為に無理やり笑顔で話す

以前から チハルの事が気になっていたのだ
ヤスヒコは奥手ではなかったが チハルの凛とした雰囲気や 育ちの良さそうな勝手なイメージ
のため  なかなか 口説けないでいた

食事に誘うも 潔癖症なのか外食を好まず
映画に誘うも  暗がりが怖いと言う
社員旅行には
 サボテン🌵が枯れるからと来なかった
まったく隙がないのだ

ヤスヒコの分の箱もチハルが買い取ると申し出たのだか チハルとの関係がこれで終わりになるから必死に理由をつけ 全力で断ったのだった

チハルが箱を 切れ長の瞳で 眺めている
そして

 ふふ っと少し笑った

 『ありがとう ☺ ヤスさん! 』

ヤスヒコは普段みんなから親しみを込めて
ヤスさんと呼ばれていている

ヤスヒコは嬉しかったが それと同時に
この箱を売らなくてはいけない❗
ノルマのような物 が
両肩にずっしりと重くのしかかった。