夜の闇は星の輝きを引き立てるべく真っ暗に空を包み 同時に静寂があたりを支配している
音と光りの調和のとれた空間がその夜をいっそう
悩ましいものにした
夜の公園で うろうろして時間をやりすごす
平和な時間 世の中は平和に満たされ
真夜中であっても 危険を感じることはない
『 どうこうかな? どうこうかな? 』
ヤスヒコの口癖である
何処かに売りに行くってどうこうかな?
家賃がかかるから スピードが大切なのか?
あの箱の事である
チハルの前で良いカッコして言ってしまった
あの箱を 売ろう!なんて 言い出したはいいが
売る為のアイデアがない
営業マンとしてそこそこの技術はある
だけど その箱の使い道が考えつかないのだ
『 どうこうかな 』
悩んでも仕方ない こんなときは師匠に相談して見よう
師匠は
ヤスヒコが初めて営業職についた頃
習慣的に通っていたバーで知り合った人で
付き合いはもう10年近くなる
初めて師匠と話した時のことだ
ヤスヒコの勤めていた会社は蟹のからを加工して
キトサンと言う成分を抽出し すっぽんのエキスを加えた いわゆる健康食品の会社だった
年齢 学歴不問 給料望むだけ
となんとも怪しいフレーズに誘われて
勤め出した
給料望むだけ とはいわゆる完全歩合制
商品名が、 ポンキャッキャ
なんともネームセンスが突拍子もないが
このポンキャッキャを売るってことが仕事なのだ
ヤスヒコは悩んでいた
初めは 行き当たりばったり
家族や友人など手当たり次第に売る
健康食品なので 健康を売る仕事なのだ
いいことをしていると思っている
しかし ある一定の量を売ると とたんに売れなくなる
当然だ
付き合いで 1つや 2つは買っても
それから先は
『まだあるから大丈夫!』 とか
『 お金がないから そんなに高いのは無理 』
など 様々
売れないと給料とならない
1ヶ月もしないうちに 行き詰まる
『 はぁー ダメだなぁ どうこうかな? 』
ヤスヒコがつい心の声を漏らした時
隣で飲んでいた人が話しかけてきた
『 おいおい どーしたんだい 若者ょー
ため息をはくと しわ寄せがくるぞ 』
ヤスヒコは思わず笑った
『 幸せが逃げるなら聞いた事あるっすけど! 』
師匠は大真面目な顔で話す
『 いやいや しわ寄せなんだなこれがさぁ
例えばアレだ 鼻毛抜くと涙が出るだろう
それと一緒なんだ 』
『 そ、そーなんですか? 』
『 いや違うかな 』
『 … 』
『 悩んでいるのだろう 』
『 えぇ 』
『 解決したいだろう 』
『 まぁ 』
『 逃げるのか?、』
『 それもアリかなって思ってます 』
『 俺に解決が出来る問題ではないと思っているのかぃ 』
なんとも掴み所のない人だな この人
ヤスヒコは観察した
パーカー にジーンズ
髪は短く爪も短い 手の皮が分厚く
スマートな印象だが ひ弱ではない
年齢不祥 若そうではあるが経験豊富というか
色々な事をやってきたのだろう
会話の取り方が
どこか駆け引きしているような感じがする
直感であるがなにかの職人だろうか?
『 解決はできる がキミはソレの代償に何を差し出す? 』
やはりだ この人は駆け引きを仕掛けている
負ける訳にはいかない
交渉術として大事なことは 引かないこと
『 今の僕には若さと野望しかないです 』
『じゃあ わかぼう だな 今からキミは わかぼうと呼ぼう❗ 』
すり替えられた
『 なぁ わかぼうよ 答えはキミの中にあるのだよ 』
『 はぁ 』
あまりピンとこなかった
『 話してごらん 解決したいだろう 』
あっと言う間に詰められた