悩んでいる内容を簡単に話すと

『 なぁ わかぼうよ 

孫子の兵法   

って知ってるかぃ? 』

昔の三國志とかで使われた現代なら交渉術のたぐいだろう 

師匠がグラスをクィと傾けウイスキーを一気に飲み干すと とたんに早口で話し始めた

『 その1
敵を知り己を知れば百戦危うからず

まずは 敵は誰なのか?

これをはっきり決める 

敵(てき)は的(てき)とも言える 
分かりやすく言うとターゲットだ

次に 自分はどうなのか 何が出来る?
得意な事はなんなのか?
人からどう見られている?  

どう? 解る? 』

『 はい なんとなくですが、 』

『 なんとなく じぁ なんとなくだよ 』
とたんに詰められる

『 まぁ 酒も飲んでいるしな、
 明日の昼間俺の事務所においで 』
すっと差し出された名刺には 

合同会社 ジャックユニオン
 本願 他力

と書いてあり 電話番号など細かくかいてある
会社の住所を見ると ここからさほど遠くない

『 わかりました では明日 行こうと思います あの 、 』 

『 なんだね わかぼうょ 』

『 何て お呼びすれば 』
名刺の名前の
読み方がわからなかったので素直に聞いてみた

『 そうだね  師匠と よんでくれたまえ 』

師匠は 愉快そうにそう話すと おもむろに立ち上がり スタスタと出口へむかった

いつの間にか支払いを済ませたようだ

翌日  名刺の住所を頼りに事務所を探す

古いと言うか モダンなデザインのビル
高さからすると3階建だろう
蔦の葉が程よく絡みついた壁や柱は
大正時代からありそうな雰囲気
エントランスには 
トックリバチのシルエットを型どられた大理石
その奥はレストランになっているようだった
エレベーターはなく 階段がゆっくりと登れるように 一段一段の幅が広い 
総理大臣とかがずらりと並び写真を取るような
場所のようだった

階段を登りきったところにドアが2つあり
白塗りの壁に 
左側が赤い扉  右側が緑の扉
まるでカップうどんのような配色で 
ヤスヒコ思わずふふと小さく笑った

『 何がおかしい事でも? 』

後ろから 冷淡な口調で声をかけられた

『 い、いえ  』

ヤスヒコが慌てて振り返ると 
 
長い髪をひとつに束ね キリッとした表情
 ピタッとした黒いスーツに赤いシャツ
カクばった黒ぶち眼鏡 
なんともインパクトある女の子が立っていた