芸歴10年目、突入。

10年前は、23歳。まだ大学生。
留年して、5年生の年。そして、吉本の養成所こと「NSC」に入ったのもその年。大学は単位がまあまあ残ってたから、それなりに授業ありつつ、吉本の養成所いっての毎日。

その合間に、コンビニで夜勤のアルバイト。夜勤明けにNSC行って朝からラッキィ池田さんのハイテンションダンスの授業したのは、今考えても自分の体力を褒めてあげたい。

ぼくが入った時のNSCは、エンタの神様やオンバトのお笑いブームの影響もあって、入学者は1000人近かったらしい。

一期上の先輩が授業のスタッフにつくんだけれど、当時はまだ縦社会ビシビシだったので、1年上の先輩でも、その差はとんでもなく大きく、こわかった思い出しかない。

挨拶なかったら殴られるし、1分1秒でも授業遅れたら帰らされるし、出席の印つける「〇」の円の書き方が汚かったらキレられる。こんなこと日常茶飯事。だから、10年上の先輩なんて、もうそれはそれは大先輩で、ひたすらすんごい存在。テレビで司会してるような人たちなんて神様のような感じ。

後から分かったけど、最初に大人数をふるい落とすために、わざとこわい先輩を演じてて、先輩も慣れない怒り方は大変だったらしい。


そんな自分が10年目の人。ほんとあっという間だし、信じられない速さ。同期もすっかりみんなおじさんだ。

今でこそ「スイーツ芸人」としてやってるけど、養成所時代入れたら4〜5回くらいコンビを解散して組んでの繰り返し。

公園で漫才の練習してたら雨降ってきて屋根付きの駐車場に移動して練習してたらその家の主に見つかって怒られたり、吉本の劇場の出番じゃ足りないからフリーライブにでまくってたらなぜか長井秀和さんに気に入られたり、賞レースの本番当日に父親のお通夜が被って参列する前にネタやってきたらすべりすぎたせいか足が腫れて歩けなくなったり、今じゃイメージないくらい「芸人」してた。


10年前、爆笑問題さんが大好きで漫才に憧れて入ってきた「なかのたかふみ」が、10年後、パンケーキの帽子かぶった「スイーツなかの」なんて想像できもしない。ただ、変わらないのは「自分の好きなことして人に楽しんでもらいたい」という気持ちを持っていること。


「スイーツ芸人」をはじめて5年くらい経つけど、当時はまだ「〇〇芸人」で活動してる人ってあんまりいなかった。今では、医者芸人(これは同期のしゅんP)や、他事務所だとコーヒー芸人さん、魚芸人さん、とか他にもたくさん。これはシンプルに嬉しいこと。

お笑いの形は違えど、エンターテイメントの世界で、なんか自分にしかできないこと、圧倒的な存在になりたいということが、今に繋がってる。振り返れば、その気持ちは養成所入った時の唯一無二になりたい憧れにも近いのかな。


最近は、ありがたいことに色んなお仕事させてもらってて、本当に感謝しかない。ぼくの仕事はお菓子の作り手の人がいてこそやらせてもらっているから、そういう人たちの想いを届けられることは、素直に嬉しい。


スイーツの世界に足を踏み入れて、お菓子の作り手の人たちと会うことが多くなった。昔から大好きだったお菓子にそんな背景があったなんてとか、「つくる」を知れば知るほど、作り手の人たちは本当にかっこいいし、敬意の念しかない。どんな世界でもものづくりの人たちが大好きで、側で触れると、自分のやってることを勝手に後押しされているような気持ちになっている時もある。都合いいけどね。

最近出会ったお菓子が、よく知っているお菓子とあまりにも「見せ方」がそっくりだった。お菓子の世界では、見せ方限らず、作り方や味まで、似てるなんてことはよくあることだから、今にはじまったことじゃないのもよく知ってる。あのお菓子も、あのお菓子もそう。

ただ、今回は元を作った人の想いもよく知ってたから、ちょっと辛くて。そのお菓子作った人も熱量込めて作ったんだと思うんだ。食べたら、その気持ちも伝わってきたよ。だからこそ、少し悲しくて。オリジナルの新しいもの産み出したいと思って、作ったはずなのに、最後の最後でなんでそうなっちゃったんだろう。

芸人と比べるなんてほんと失礼かもしれないけど、どこか重ねてしまうところもあって。ネタ作っててどっかで見たことあるパッケージやっちゃってるなとか、聞いたことあるようなフレーズでツッコミしちゃったなとか、無意識でもやっちゃってることってあるんだけど、そういう時ってウケてもすごい悔しいのよね。すべっても自分のもんでやればよかったのになあって。

ぼくはお菓子作れないけど、お菓子の作り手の人もそうなんじゃないかなと勝手に思ってる。どの世界でもそうだと思うけど、その燃料根っこにないと、辛いよね。まじで芸人ごときが違う世界のことに偉そうにすみません。

と、話ずれたけど、他のこと言ってる場合じゃなくて、お前がしっかりしろ。Facebookあければ、友だちの子どもの写真が増えてきた。一番下の弟夫婦も子どもが産まれて、姪っ子ができた。家族グループLINEに貼ってくる姪っ子の写真に、一人暮らしのスイーツおじさんはにやにやしちゃうよ。かわいいな、愛しさしかない。


子どもができたら、とか一瞬考えてる自分にびっくりする。そもそも、彼女もいないのに結婚できんのかな。好きなひとに好きを伝えるなんて何年もしてない。月が綺麗ですね、なんてアイラブユーを訳せるくらい、誰かに夢中になれるのかな。これが悩んでるようで悩んでないのも、やばいのかな。

でも、いい。そんなことより、目の前の人たちを楽しませたいし、自分を好きなひとに喜んでもらいたい。こんな時だからなおさら、そんなことを強く感じるよ。

ひたすら駆け抜けて、突き抜けたい。
支えてくれるみなさん、本当に感謝しかない。
いつも、ありがとう。

10年目も、よろスィーツ!