専門学校の卒業式の翌日、俺は成田国際空港から関西国際空港に向かう飛行機に乗った。関西国際空港からだと、済州国際空港行きの直行便があるのだ。
2人きりでの撮影だと聞いていたから、俺はてっきり成瀬さんと一緒に空港から出発するものだと、つい昨日までそう思い込んでいた。
「撮影の準備とか色々とあるから、先に行って待ってるよ。一緒に来てあげられなくてごめんね」
渡韓する方法について確認した時には、それを聞いて驚いた。1人で海外なんて行った事がない。でも、成瀬さんの後を追い掛けているみたいなその旅は、俺にとって胸の高鳴る冒険でしかなかった。
成田から関空までは、ワクワク感はあったけれど、国内だし緊張感はそんなに無かった。しかし、関空で済州島行きの便に乗り換えると、一気に周りの雰囲気が日本ぽく無くなり、韓国感が強まる。そう言えばこの飛行機は、日本の航空会社じゃなかったなと、アナウンスを聞いて思った。
済州島に近付くにつれ、渡韓とは違う緊張感が大きくなる。破格のバイト代に飛び付いてしまったけど、俺なんかがモデルで良かったんだろうか?一応、脱毛とエステには、2だけ回行って来たんだけど。
『まさかとは思うけど、裸になるとか無いよな?』
突然、小野先輩の言葉が脳裏を過ぎって、そんなバカなと俺は頭(かぶり)を振った。成瀬さんの事となると、先輩は物凄く不機嫌になるんだよな。他の人に対しては、あんな態度取らないのに。
あれじゃあ、まるで嫉妬してるみたいじゃないか。だけど、小野先輩に限ってそんな事……あるわけ無いよな。あの人、“働き者で笑顔の可愛い、ちょっと天然で鈍感な人”がタイプだって言ってたし。
「お客様にお知らせします。間も無く当機は、済州国際空港に着陸します。お客様には安全の為ーーーー」
関空からだと済州島は結構近い。
飛行機は2時間程の空の旅を終え、あっと言う間に着陸の準備に入る。
けれど俺の心は成瀬さんに向かったまま、ひたすら真っ直ぐに飛び続けていた。