翌朝、目が覚めてからしばらく、自分がとこにいるのか分からなくて悩んだ。



(…………そうだ。俺、韓国に来たんだ)



昨日はこの別荘の中を案内してもらって、撮影は今日から始める事を聞いて、疲れているだろうからと早く部屋に帰されたので寝るしかなかったのだ。



身体を起こしてみて部屋が暖かい事に気付く。この寒さなら当たり前かもしれないけど、気配りが凄い。スリッパに足を入れたら、肌触りの良さに驚く。しかもこの部屋にはトイレと洗面台まであるのだ。



波の音が聞こえて、カーテンをそっと開けてみる。二重窓の向こうに、くすんだ灰色の海が見えた。波があるからか、海面がキラキラと輝いて生き物みたいに綺麗だ。



思わず窓を開けてみると、めちゃくちゃ冷たい空気が入って来たので、死ぬかと思って一瞬で閉めた。本気で空気の冷たさが日本の比じゃない。



飛行機を降りる時から感じてはいたし、調べても来たけど、やっぱり韓国は寒い。済州島は日本に近くて、比較的温暖だと調べた先では書いてあったのだが、寒いものは寒い。



階段を降りてキッチンに行くと、カウルさんが何か作っていて良い匂いが漂っている。昨日はちゃんと見てなかったけど、色が白くて中性的で、ビスクドールみたいに綺麗な人だ。



「おはようございます」


「おはようございます。佐々倉さん。あの、成瀬さん起こしてもらってもいいですか?一回起こしに行ったんですけど、まだ寝てるんですよ」


「わかりました。行って来ます」



俺は成瀬さんの寝室の前に立ち、意を決してドアをノックした。



「成瀬さん、もう9時前ですよ。一緒に朝ご飯食べましょう」



何度か声を掛けたけど、聞こえてなさそうだなと思ったので、そっとドアを開けて中に入ってみる。



部屋の真ん中に置かれた大きなベッド。その端に寄って、子どもみたいに毛布を抱きしめ、眠り続ける成瀬さんの姿があった。



静かに歩み寄り、ベッドの端に座って彼の寝顔を覗き込んでいると、突然起き上がった彼が俺の腕を引いて世界が反転する。


気付けば俺は、
彼に組み敷かれていた。





つづく