伊坂幸太郎『逆ソクラテス』 | applejamな休日

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せかせか暮らしてるのに、気が付けば何もせずに一日が終わってる…
ゆっくりとジャムでも煮ながらお休みの日を過ごしたいなぁ…
大好きな韓国のドラマや音楽、その他もろもろについて書いてます

2020年4月刊 集英社





久しぶりに手にした伊坂幸太郎作品。



借りていたこの本を見て息子が

「何?ミステリー?」

「いや、ミステリーじゃないな」と私。

「じゃ、ファンタジー?SF?」

「いや、ファンタジーでもSFでもないな」

「じゃ、青春小説か何か?」

「いや、主人公、小学生なんで、青春小説でもないな」

 

 

ということで、ジャンル分けが難しいこの作品。

しかし、ジャンル分けなんてどうでも、とにかく面白かったよ。





「逆ソクラテス」


小学6年生の僕は安斎や草壁とともに「カンニング作戦」を実行する。
転校生の安斎は久留米先生はソクラテスの逆だと言う。
「俺たちが、久留米先生の先入観をひっくり返すんだ」
先入観をひっくり返す裏技は
「『僕はそうは思わない』」…




「スロウではない」


小学生の頃は、運動ができないのは致命的だ。
足の遅い僕がくじ引きでリレーのBチームに選ばれた。
Bチームは放課後の練習を始める。
いじめで転校してきたと噂される高城かれんが、
速い走り方をBチームに伝授すると…




「非オプティマス」


今日も教室に缶ペンケースの落ちる音が響く。
転校生の保井福生は嫌がらせの首謀者・騎士人に対抗する。
福生は常に安そうな服を着ているが、
親しくなった僕に福生は言う。
「これは世を忍ぶ仮の姿」
トランスフォーマーのオプティマスプライムも
いざという時には変形するのだ…





「アンスポーツマンライク」

 

大事な一歩がいつも踏み出せない僕。

小6のミニバス最後の大会、僕たちは負けた。

チャンスを逃した駿介は、相手選手をわざと転ばせて、

アンスポーツマンライクファウルを取られた。

久しぶりに再会した高校生の僕らの前に現れたのは、怪しい男。

通り魔か?気づいた僕たちは…





「逆ワシントン」

 

「真面目で約束を守る人間が勝つんだよ」

そう言って母はワシントンの話をした。

靖が義理の父に虐待されているのではないかと考えた僕と倫彦は、

クレーンゲームでドローンを手に入れ、

靖の家を探ろうとするが…






「逆」「〜ない」「非」「アン」と、
否定の意味を表す語をすべてのタイトルにつけたのは、
作者の遊び心?

 

 

思わぬ伏線に、後で気が付いたり、

他の作品の登場人物が、ちらっと出てきたり、

小学生時代と大人時代を自由に行きかったり、

思わぬ仕掛けにニヤッとします。

どの作品にも、難問の答えが見つかった時のような爽快感があります。

 

 

 

 

あとがきで作者は「子供を主人公にする小説を書くのは難しい」と書いています。

一方で、「この仕事を続けてきた一つの成果」とも書いています。

つまりこの作品は伊坂幸太郎の自信作。

おススメです。