水鈴社 2026年3月刊 201ページ
華やかな表紙に魅かれて。
新にはおとうさんがいない。
新が生まれる前に死んでしまった。
キッチンカウンターに飾っている写真について
「この人ってだれなの?」と訊くと母は「おとうさん」と答えた。
どんな人だったの?と訊くとかっこいい人だったと母は答えるが、
何をしていた人なの?と訊くとその答えはいつも違った。
「好きなことを見つけるように」という母の口癖でやった習いごとの中で
楽しかったのはお絵かきとピアノ。
ピアノ教室では中本拓人と、お絵かき教室では辻堂榛名と出会った。
写真の人が伝説のバンドマンだと知った新は、
3人でそのバンドの曲を聴くようになる。
ある日拓人が言った。「バンドをやろう」…
新少年とその母・くすかの目線で語られる章が交互に出てくる構成。
こういう、章ごとに視点が変わる構成、最近ほんとに多い。
新の父親の死、
父親と母・くすかとの関係、
くすかとその両親、義理の両親との関係、
新にとっては、とにかく謎ばかり。
私もその謎の中に放り出されて、
ページを繰る手が止まらない。
やがて謎はすべて明らかになり、
新はそのことをきっかけに、大きく成長するという、
要は新の成長物語だと思うんだけど、
ミステリー要素が強すぎて、
小説としては面白いんだけど、
何か物足りない。
くすかの周りの人とのつながり方が、まず理解できない。
実両親との関わり方も、
義理の両親とのつながり方も、
なんか共感できなくて。
子どもに亡くなった父親のことを全然話さない母親っていうのもあり得ない。
むしろ、嘘ついてるし。
音楽が少年の人生を変えていく話、
それを描きたかったんだろうと思うけど、
それにしては、背景が特殊すぎる。
高校生がバンドを組む話といえば、
芦原すなおの『青春デンデケデケデケ』を思い出した。
地方のごくごく普通の高校生がロックを通して仲間とつながる話。
特別なことは何一つないけど、
キラキラした青春が感じられて好きな作品。
大きな事件はなくていい。
淡々とした、でも大切な日々が描かれた作品を求めてしまうのは、
年を取ったからかなー


















