覚めない夢に温もりを。
つい先程事件を解決させた帰り道。
年末にまで殺意を抱くことはないのに・・・と警察へと送り届けられた犯人の顔を思い浮かべた。
この世界は随分と醜くなったものだ。
一体誰が作った世界なのだろう。
今にも雪が降りそうなくらいの冷え込んだ空を見上げる。
早く。
早く君のもとに。
家の前に辿りつき明かりがあることにホッと胸が熱くなった。
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「ただいまー。」
「おかえりなさい。」
当然かのように帰ってくるその言葉はまるで魔法のように先程まで
暗く染まった脳内を明るくさせた。
可愛らしい笑顔の出迎え。
「遅くなっちまったな・・・・先に送ってくか?」
玄関にある時計に目をやると蘭の門限が近い。
一気に気分が急降下するのが自分でわかった。
「大丈夫だよ、新一と一緒に食べようと思ってまだ私も食べてないの、年越し蕎麦・・・食べるでしょ?」
ちょっと相手の様子を伺うようなその言い方にトクンと軽く胸がはねた。
「あぁ。」
内心は嬉しくてたまらないのに素直に反応出来ない自分が馬鹿らしく思えた。
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「今年もあと2時間か・・・・。」
二人で年越しそばを食べ終えてなんとなくつけている紅白歌合戦に目を向けながら口にした。
「今年もあっという間だったね。」
「そうだなぁ・・・。」
「今年は新一とずっと一緒にいれたから本当あっという間だったな。」
「・・・・・?」
「去年はコナン君だったから・・・・私にとっては新一のいない一年だったんだもん・・・・・すっごく長かった・・・。」
どこか曇った表情の蘭の台詞に何も返せない。
「だからっ・・・だからね?今年は新一といれて・・・・本当に本当に嬉しかったの。」
ニコッと頬を染めて告げられるその言葉に俺は頭を撃たれたかと錯覚した。
もう何も我慢することはない。
俺は蘭を抱き寄せた。
何よりも大切な・・・大切な存在を。
「・・・・俺も・・・・夢みたいな一年だった。」
「夢だなんて言わないで・・・・覚めたら怖い。」
「・・・・・・・・ごめん。」
そのまま俺は抱きしめる力を強くした。
今、ここに君がいる。
今、ここで君を抱きしめる事が出来る。
こんなに幸せなことがあるのだろうか。
「・・・・・新一・・・・・?」
俺の腕の中でじっとしていた蘭が見上げてきた。
「・・・・・今日・・・・お父さんいないの・・・・・。」
「・・・・・・・へ?」
「・・・・・・泊っても・・・・いい?」
顔を真っ赤にして恥ずかしそうにした彼女から告げられた言葉はすぐには理解出来なかった。
「・・・・・・後から無理って言っても帰さねーからな・・・・?」
「ん・・・・・。」
そのままどちらからともなく口づける。
その柔らかいなんともいえない感触に身体の中心が疼く。
「・・・・・・・・・新一。」
消えかけの俺を呼ぶ声が更に俺の理性を奪う。
深く長く。
君を味わう。
全てを俺に捧げてー・・・・・・
蘭の肩と膝の裏に腕をまわして横抱きにする。
「きゃ・・・・・!」
「部屋いこ・・・・・。」
蘭の瞼にキスを落とす。
くすぐったそうにみじろぐ蘭。
「・・・・・・・・ん。」
そしてそのまま俺達は愛し合う。
:::
薄暗い部屋で携帯が光り時刻を通知する。
「あ・・・・年明けた。」
「え?」
「・・・・・蘭、明けましておめでとう・・・・今年もよろしくお願いします。」
クスクス笑う君。
後ろから抱きついてまた君の温もりを感じる。
モゾモゾと君がこちらを振り向いて目が合う。
「ん?」
と首をかしげると。
ちゅ
君からの不意打ちのキス。
心なしか頬が熱くなった気がした。
「こちらこそよろしくお願いします。」
今年も君から離れられそうもない。
最高に幸せな年明け。
今年もまたいい一年になりそうな、そんな予感がした。
FIN
:::あとがき
ただラブラブな感じが書きたかっただけ。
わけわかんない。
恥ずかしい・・・・・。
2010.12.31 kako