大丈夫。
きっと大丈夫。
私は新一を信じてる。
だって、私の欲しかった“大丈夫”だったもの。
だからこそ。
ねぇ。
私・・・・・。
もう待つだけなんて。
嫌。
待つだけなんて嫌なの。
私。
今スグ、彼方の元へ行くわ。
ダカラ。
ダカラ・・・・。
何も言わず。
私を見つめて。
その真っ直ぐな瞳で。
そっと微笑んで。
きっと、そこに後悔なんて存在しないから。
第7話
少し大きめのバッグに着替えと財布と携帯を入れて。
事務所のメモ帳に一言残す。
「新一に会ってきます。 蘭」
誰もいないその場所は静かで、でも自分の早くなった鼓動が耳に伝わっている気がして頭の中はガンガンとした感じが続いてた。
バタン!
とドアを閉めて鍵をかけて階段を走り降りる。
気付いたら、走り出してた。
とにかく何も考えずに。
ただ。
ただ。
新一に会いたい一心で。
飛行機の搭乗の手続きの事とか、北海道のドコに向かえばいいのかなんて何もわからないのに。
一体どうするつもりなんだろう。
途中でタクシーを拾って空港に向かって。
タクシーの動きに身体を揺らしながらしっかりと合わせた膝の上に掌を組んで強く握り締めた。
目を閉じていたからその時の私には何も見えてなかった。
ただ、新一が無事であることを願って。
空港に着いて窓口を前にして足が止まった。
「待っててくれ。」
彼は確かにそう言った。
もしかしたら今自分がしている行動は彼の真っ直ぐな誠意の詰まったその約束を破ってしまうものかもしれない。
彼をがっかりさせてしまうかもしれない。
だって、彼は確実に約束を守ってくれるのだから。
絶対に破りはしない。
言い切る自信があるほど、彼を信じてる。
工藤新一とはそういう人なのだから。
けれど、その約束を破ってしまったとしても、今、会いたいのだ。
もう、待ってるだけなんて・・・・出来ない。
会いに行って、伝えられるかどうかなんてわからない。
ただ、どうしても・・・今しかない。
そう思った。
搭乗の手続きをして飛行機に乗り込む。
機内にシートベルト着用のアナウンスが流れる。
滑走路へと動きだす。
低く大きく、後ろから押されるような音がして前へと加速されていくそのスピード。
フッと地面から離れる感覚。
窓から外を眺める。
薄暗かった世界は気づけば完璧な暗闇となっていて。
星が近かった。
ねぇ、新一。
今、アナタはこの綺麗な星達を眺めることが出来ていますか?
凄く綺麗だよ。
東京の人が忙しく行きかう街の中心からだってこの星空は見えるよ。
新一は今北海道だから、もっと綺麗な星空を見れているかもね。
それとも・・・
夢の中を彷徨ってるのかな?
寂しさを感じてるのかな。
新一には怖いものなんてないだろうから、平気かもね。
けど、私も隣にいてもいいかな?
邪魔しないように静かにしてる。
だって、一人だと下ばかり見てしまうでしょ?
新一は強い人だから前も向けるかもね。
でも二人だったら・・・上にある星空にも気づける気がしない?
一人の沈黙もたまにはいいけれど。
二人の沈黙も温かいかもしれないよ。
新一がいなくなってから、ずっと感じてた。
会いたくて会いたくて。
胸がぎゅーっとする感覚。
それが今まさに最高潮。
今、飛行機の中でシートに座って窓から外を眺めている私はここにしかいない。
今もどこかで存在してる新一の傍にいる人が羨ましくてしょうがないよ。
「今」の新一に会いたい。
ずっと・・・・ずっと・・・・会いたい。
目をそっと閉じると。
今までの新一との思い出が一気に浮かびあがる。
新一と出会った時。
幼稚園の時。
小学生の時。
中学生の時。
喧嘩した時。
一緒に遊びに行った時。
新一への想いに気づいた時。
新一がいなくなった時のこと・・・。
私・・・の思い出には全部新一が登場してくるよ。
嬉しい時も、楽しい時も、悲しい時も。
傍にいるのは、いつも新一だった。
今も、これからも。
傍にいてくれるのは新一がいい・・・。
ふと目を開くと窓に写る自分の頬に一滴の涙が流れているのに気づいて、微笑みかかけた。
信じてる。
信じてるからこそ、会いに行く。
そして、確かな私の気持ち。
もう迷わない。
ただ伝えたい。
伝えたいの。
ねぇ。
新一が愛しくてしょうがない。
08
>>
:::あとがき
蘭ちゃんside。
一人称。
会話なし。
とにかく蘭ちゃんの頭の中に浮かぶであろう言葉をひたすら書きました。
なんの動きもないけれど・・・。
この蘭ちゃんの動きがないとこの話は始まらないんだ。(勝手に言ってる。)
今までとは違う。
彼女は動くんです、
彼のために。
自分の気持ちのために。
2010.11.30 kako
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