それで走ってしまった | 統合失調症の海をゆく

それで走ってしまった

「あんたが本を出しても、中途半端。」

たしなめられました。母に。

「病気から立ち直って就職できた訳でもない、

工芸がモノになった訳でもない、

 いつ再発するかもわからない、そんな人の文章を

 誰が買ってまで読みたいと思う?」

……正論です。

実は先日、お葬式に行きました。

小・中・高と同級生だった子のお葬式でした。

雨の日に困っている子がいれば、

その子に無言で傘を差し出し、

自分は濡れて走って帰るような、そんな優しい子でした。

中学・高校ではサッカー部に所属し、

キャプテンを務めていました。

「成績優秀・優等生」ではなかったけど、

リーダーシップがあって、周りに人が絶えない人だった。

20歳で早い結婚をして、子どもは女の子2人。

会社の帰りに、免許取り消しの人が飲酒運転をしていた、

その車にはねられて命を落としたのです。

彼には何の非もありませんでした。

毎日真面目に働いて、空き時間には同僚と冗談を飛ばし、

休みの日にはささやかに家族と旅行。

釣りが趣味で、

大物を釣り上げて魚拓を取るのを楽しみにしていた。

ただ、夜道を歩いて家路を急いでいただけなのに。

ある日突然奪われる明日。

と、以前私はブログに書きました。

(これは「模倣犯」のキャッチコピーでしたね。)

統失で仕事や彼氏を失った事をそう表現したのですが、

死というのはもっと圧倒的に全てを奪う。

泣いている奥さんやご両親、

暗い目でうつむくお子さんを見て、

言葉が見つかりませんでした。

そして思ったのです。

「明日、私が何かの間違いで死んでしまったら、

のこるものがないや」

と。

夫も子どももいない、

当分工芸でも一人前になれなさそうな私が、

のこせるものって何だろう、と。

……それで、唐突に出版のことを思いついたのです。

「えっ、なんで突然?」

と、思われた方も多いと思います。

ので、言い訳させていただきました(苦笑)。