はたらくお姉さん
新入社員の増水さんは、部署に配置されたその日に、
「私、体が弱いんで、無理ができないんです。」
と、言い放ちました。
「ですから仕事量を、加減していただきたいんです。」
ああ~?!(むかつく私達)
でも、体が弱いんなら仕方ないよね。
と、いうことで、
人の3分の2の仕事量からスタート。
とばっちりをうけたのは、同期入社の為沢さん。
人の3分の4の仕事量からのスタートとなりました。
悠々と仕事をやりとげ、余裕を持って周囲を見て、
どんどん仕事をおぼえてゆく増水さん。
とにかく仕事を消化することに必死で、
だんだん体力も気力も失ってゆき、さらに
人への配慮もなくしてゆき、評判を落とす為沢さん。
そんなある日の残業中、高校時代の話になりました。
「私は高校も大学も書道部でした。」
と、為沢さん。
「わたしは高校ではバスケ部でした。」
と、増水さん。
……え?
増水さんの高校のバスケ部は、
全国大会に出場したこともある、名門です。
「マネージャーやってたの?」
「副部長でレギュラーでしたけど?」
……何が、「体弱い」だー!
ぜんぜん働けるやんけー!!
と、その場にいた全員が思ったと思います。
即座に仕事量は増やされました。
が、その頃には、彼女は
他部署との要領のいい連携や、
取引先への感じのいい応対を覚えていて、
(暇な時に先輩のやっているのを見ていたらしい。)
新人ながら安定感のある仕事をするようになって
いたのです。
とばっちりをくった為沢さんは、
体を壊して潰れていきました(そして転職)。
「為沢はいつもイライラしててムカついたけど、
増水は要領が良すぎてムカつくよな。」
とは、上司の言。
新卒離れしたあざといばかりの処世術に、
「女って奴は、したたかだわ……」
と、しみじみしてしまいました。

