はたらくお姉さん | 統合失調症の海をゆく

はたらくお姉さん


新入社員の増水さんは、部署に配置されたその日に、

「私、体が弱いんで、無理ができないんです。」

と、言い放ちました。

「ですから仕事量を、加減していただきたいんです。」


191

ああ~?!(むかつく私達)

でも、体が弱いんなら仕方ないよね。

と、いうことで、

人の3分の2の仕事量からスタート。

とばっちりをうけたのは、同期入社の為沢さん。

人の3分の4の仕事量からのスタートとなりました。

悠々と仕事をやりとげ、余裕を持って周囲を見て、

どんどん仕事をおぼえてゆく増水さん。

とにかく仕事を消化することに必死で、

だんだん体力も気力も失ってゆき、さらに

人への配慮もなくしてゆき、評判を落とす為沢さん。

そんなある日の残業中、高校時代の話になりました。

「私は高校も大学も書道部でした。」

と、為沢さん。

「わたしは高校ではバスケ部でした。」

と、増水さん。

……え?

増水さんの高校のバスケ部は、

全国大会に出場したこともある、名門です。

「マネージャーやってたの?」

「副部長でレギュラーでしたけど?」


192

……何が、「体弱い」だー!

ぜんぜん働けるやんけー!!

と、その場にいた全員が思ったと思います。

即座に仕事量は増やされました。

が、その頃には、彼女は

他部署との要領のいい連携や、

取引先への感じのいい応対を覚えていて、

(暇な時に先輩のやっているのを見ていたらしい。)

新人ながら安定感のある仕事をするようになって

いたのです。

とばっちりをくった為沢さんは、

体を壊して潰れていきました(そして転職)。

「為沢はいつもイライラしててムカついたけど、

 増水は要領が良すぎてムカつくよな。」

とは、上司の言。

新卒離れしたあざといばかりの処世術に、

「女って奴は、したたかだわ……」

と、しみじみしてしまいました。