マスター・ヨーダと、出会った~
4年前の私は、
10kmを1時間で走ることができました。
ところが現在の私は、
近所を散歩しているだけでめまいが起こります。
川べりの立ち枯れた桜並木、その下にあるベンチに
ふらふらの私が辿りつくのは日課となりました。
そこに、絵を描くおじいさんがいたのです。
不自然な程うすっぺらい体で、それでもシャンと立ち、
川面と空と枯れ木を描いていました。
雰囲気から、ヨーダさんと名づけました。
(リスペクトスターウォーズ☆)
「お元気ですね。」
ある日、思いきって、声をかけました。
「そうですね。
昨年ガンで胃を半分切除し、
現在、抗がん剤治療を受けておりますが、
このように毎日、好きな絵を描いていられます。」
ヨーダさん!
切り返し方がわかんないですよ!
おもわず黙り込んだ私に、
ヨーダさんはニコニコと笑いました。
ヨーダさんの正体は、
我が家の近くの大きなスーパーの元経営者でした。
現在は息子さんに譲って、隠居しているそうです。
「趣味はこの絵とマンドリンです。
色々試してみましたが、それが一番おもしろかった。
これらをやっていると、楽しくてたのしくて、
いくらでも生きられる気がします。」
あっ、
マンドリンなら私も学生時代やったことあります。
「おや、そうですか。先生について習っているんですが、
一緒にやりませんか?」
ええ?!
嬉しいけれど、今の自分にやれるかどうかが不安です。
「私もへたっぴですよ。お互い初心者です。
(不安なのはそこじゃないんです。気力・体力です。)
いいじゃありませんか。」
おいしそうに、セブンスターを吸うヨーダさん。
とりあえず一緒に習うことになりました。
こんな風に世界が広がることもあるんだな、
と、思いながら、
2人で北風に吹かれている午後です。

