火の国の男 その2
うちの父はお酒を飲むと言葉がアヤしくなります。
先日、おでかけしてご飯を食べました。
「うのうがキレイやねえ」
右脳!?
何でご飯屋さんでイキナリ右脳?
しかもキレイってなんだ。
「ホントにほのおはいいねえ」
あっ、炎ね……
お店にはたくさんのキャンドルが灯されていたのでした。
「ただのご飯屋だけど、もっと高級に見えるね」
そうだね、ロマンチックだね。
でも、その言葉を思いっきり大声で言っちゃダメ。
ホールどころか厨房の人もこちらを見ています。
さらにウェイトレスさんに伝えちゃダメ。
困ったような笑顔で私と母を見ます。すみません。
さらに、食事が終わった後、
「もうこれいらんやろ」
って、うちのテーブルのキャンドルを手で消そうとして
「あちっ!!」
やけどしてるし。
何十歳児なんだ!!!
お父さんとは、ちゃんとしたお店で食べたくない、わ~
などと、思春期の娘みたいなことを考えていた時、
「ごちそうじゃったな」
と、満足そうにお父さん。
「そうね」
と、テンション低く私。
「まあ、家族で食べたら何でもごちそうやけどね」
……火の国の男は、情が深くあるのです。