2018/01/13 | swaramayanaのブログ
    「2030年までに8億人分の仕事がロボットに引き継がれる」マッキンゼー予想
    今の仕事の5割は自動化可能
    1時間前
    マッキンゼー・アンド・カンパニーが労働市場の未来を予測する調査を行った結果、対象となった11の産業すべてにおいて、「2030年にかけて、日本の労働市場の需要は落ち込むあるいはほとんど成長しない」と予想されていることが分かった。

    「2030年までに8億人分の仕事がロボットに引き継がれる」と見込まれており、総体的に、IT技術者や建築技士、教育および医療関連の職業は今後需要が伸びると期待されているが、修理工や整備工、農夫、清掃夫といった物理的作業は「AI化による雇用縮小のリスクが最も高い」という。

    主要調査対象6カ国中、労働市場の予想成長率が最も低い日本

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    (画像=Thinkstock/GettyImages)

    調査はマッキンゼーが「2030年までに自動化されている職業」に焦点を当て、日本・中国・米国・インド・ドイツ・メキシコを含む46カ国・地域における労働市場の移行を調査・予想したもの。

    今後人間の従業員の需要がさらに伸びる・落ち込むと予想されている職業を国ごと(日本・中国・米国・インド・ドイツ・メキシコ)に比較してみると、日本は特殊な位置づけにあるという印象を受ける。調査の対象となった11の産業すべてにおいて、日本の労働市場の需要は落ち込むあるいはほとんど成長しないと予想されているのだ。

    例えば今後需要がさらに伸びると予想されている職業のひとつに、コンピューター技師や専門家が挙げられる。デジタル社会への移行を考慮すると当然の流れと思いきや、インドでの需要(129%増)が極めて高くなると予想されているのに対し、日本はその8分の1程度(15%)にとどまる。

    教育関連職の需要も現在の2倍以上(208%)というインドや中国(119%増)など、ほかのすべての対象国で伸びると期待されているが、日本は6カ国中唯一落ち込む(8%減)。特に物理的作業(33%減)、事務作業(23%減)、建設(16%)といった産業で、日本の雇用が大幅に縮小していきそうだ。

    経済成長の鈍化が原因で多くの職業が自動化される?

    こうした需要の落ち込みは、けっして産業自体の縮小を意味するものではない。自動化が進み、人間の雇用口が減るということだ。

    マッキンゼーは日本における経済成長の鈍化そのものを、予想結果の要因として挙げている。「日本は経済的に豊かな国だが、2030年にかけて経済成長は鈍化していく」とし、その結果、多くの職業が自動化に追いやられる―つまり人間の従業員の雇用が減ると予測している。高齢少子化による影響もあるだろう。

    経済的な経済成長を維持する上で、雇用創出は欠かせない。経済成長があって初めて生産や需要が伸び、そこから新たな雇用が生まれる。そう考えると日本は頭打ちといった感が強く、他国・地域とは異なる自動化への対応策が必須となりそうだ。

    現在の仕事の5割は自動化可能? 2030年までには平均1.5割がロボットに

    総体的に「現在の職業の50%が自動化可能で、労働時間の30%の業務を自動化できる職業が60%ある」ものの、マッキンゼーは技術的、経済的、社会的要因が妨げとなり、「2030年までに自動化がそこまで進んでいる可能性は低い」と見ている。各地域によって進行具合に差がでるだろうが、実際に自動化されるのは0~33%程度、平均15%程度とのことだ。

    発展途上国よりも賃金の高い先進国の方が自動化の影響を受ける傾向が高く、すべての労働者になんらかの形で「自動化」を体験することになりそうだ。影響そのものは広範囲におよぶが、2030年に十分な完全雇用口が残っていると仮定しても、世界中で7500万~3.75億人の労働者(全労働者の3~14%)が、職業を変える必要にせまられるとマッキンゼーは見ている。

    しかし労働市場が大きな革新期に突入した後も、所得格差は縮まりそうにない。政府や企業が率先して対策を講じないかぎり、高所得職の賃金はさらにあがり、中所得職の賃金がさがるとの予想だ。

    働き盛りの年齢層が最も影響を受ける?

    年齢・地域によっても影響の度合いに差がでるが、先進国・発展途上国問わず、「働き盛りの年齢に最も影響がでる」点は共通する。

    日本では労働市場の26%が自動化され、45~50歳が最も影響を受けると予想されている。過去には農業(1960年56%減)や製造(1994年27%減)産業の雇用が大幅に縮小したが、2016~2030年にかけてはさらに製造(36%減)、小売(27%減)産業での雇用が低迷する兆しが見える。

    米国やドイツ、英国などの経済大国では40~45歳の層が最も影響を受けやすく、ドイツでは輸送(34%減)や農業(30%減)、米国では製造(32%減)、宿泊、食品(各30%減)産業で雇用が減りそうだ。中国やインドでも製造(37%減、15%減)産業の雇用が最も大きい。インドネシアやマレーシア、フィリピンなど多くの発展途上国では、影響を受けやすい年齢層は30~35歳と低めだ。

    これらの労働者は定年退職にはほど遠い年齢であることから、転職やスキルアップなど、市場の需要に見合った動きを余儀なくされるだろう。

    デンマーク以外のOCED加盟国で職業訓練公共支出が減少

    各国・地域はこうした来るべき変化に向けて、十分な準備を整えているのだろうか。1993~2015年にかけてのOCED加盟国の職業訓練公共支出とGDPを照らし合わせてみると、主要国が軒並み予算を減らしていることが分かる。例外はデンマーク(0.1%増)だけ。

    特にドイツ(0.37%減)、カナダ(0.23%減)、オーストラリア(0.13%減)、英国(0.12%)、フランス(0.10%減)。日本(0.02%)の予算はそれほど目減りしていないが、GDPに対する職業訓練支出はわずか0.01%。デンマークの60分の1、ドイツの20分の1、米国の3分の1と比べ物にならないぐらい低い。同様のことが労働市場への公共支出にも該当する。

    繰り返しになるが政府や企業による取り組み姿勢が、各国の自動化と労働市場を形づけていく重要なカギをにぎっている。調査では今後の政策立案者の課題として、「経済成長」「職務能力向上」「流動性の高い労働市場の構築」「移行への支援」が挙げられている。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)


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