商標が非類似とされた例 | SIPO

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審決例(商標):類否152

 

<審決の要旨>

『(1)本願商標について

 本願商標は、「Arrows体操教室」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「Arrows」の欧文字は、「矢」の意味を有する英語「Arrow」(「ジーニアス英和辞典  第5版」株式会社大修館書店)の複数形を表す語として一般に知られていること、並びに、構成中の「体操教室」の漢字とは互いに異なる文字種で表されていることから、本願商標は「Arrows」と「体操教室」の各文字が結合してなるものと容易に看取されるものである。

 また、本願商標の構成中「体操教室」の文字は、「身体各部の均斉な発育、健康の増進、体力の鍛錬などを目的として行う一定の規則正しい運動」等の意味を有する「体操」の語(「広辞苑  第七版」株式会社岩波書店)と、「技芸などを教える所」を意味する「教室」の語(同)を結合したものと容易に認識されるものであり、両文字の語意から、「体操を教える所」ほどの意味合いが生じるものである。

 そして、本願商標は、文字種の差異はあるものの、構成各文字が同じ書体及び大きさをもって間隔なく表されており、全体として外観上まとまりよく一体的に構成されているものである。

 さらに、本願商標の構成中「体操教室」の文字が、「体操を教える所」ほどの意味を想起させ得るとしても、本願指定役務中、第41類「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧」との関係においては、直ちにその質(内容)や提供の場所等を認識させるものとはいえず、本願商標を構成する「Arrows」の文字と、「体操教室」の文字との間に、出所識別標識としての軽重の差は、さほどないというのが相当であるから、前記のとおり、まとまりよく一体的に表された本願商標の態様から、本願商標が、殊更、「体操教室」の文字部分を捨象し、「Arrows」の文字部分のみをもって取引に資されるものとはいい難い。

 そうすると、本願商標に接する需要者は、本願商標を一体不可分のものと認識、理解するとみるのが相当であるから、本願商標は、その構成文字に相応して「アローズタイソーキョーシツ」の称呼が生じ、構成文字全体として体操を教える所の名称を表したものと理解されるといえるものの、具体的な意味合いを認識させるとまではいい難いものであるから、特定の観念を生じないものである。

(2)引用商標について

 引用商標は、「ARROWS」の文字を標準文字で表してなるところ、これより「アローズ」の称呼を生じ、「(複数の)矢」ほどの観念を生じるものである。

(3)本願商標と引用商標の類否について

 本願商標と引用商標を比較するに、外観においては、全体の構成態様及び構成文字等において明確に区別できるものである。また、称呼においては、本願商標から生じる「アローズタイソーキョーシツ」の称呼と、引用商標から生じる「アローズ」の称呼は、構成音及び音数に明らかな差異があるため、両商標は、称呼上、明瞭に聴別できるものである。さらに、観念においては、本願商標から特定の観念を生じないのに対し、引用商標からは「(複数の)矢」ほどの観念を生じるものであるから、相紛れるおそれはない。

 そうすると、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念において相紛れるおそれがないものであるから、両者の外観、観念及び称呼等によって需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。(下線・着色は筆者)』(不服2023-9999)。

 

<所感>

審決は、本願商標において文字種の異なる「Arrows」と「体操教室」といえども一体的に把握されるとして分離観察を否定し、引用商標「ARROWS」と類似しないと判断した。この判断は前々回のケース(類否150)に近く、審判ではこのような考え方が定着しつつあるように感じる。