商標が類似とされた例 | SIPO

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審決例(商標):類否143

 

<審決の要旨>

『1 引用商標8を含む「Jeep」、「JEEP」の文字からなる商標の周知著名性について

(1)請求人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。

 ア~ク 略

(2)上記(1)で認定した事実によれば、請求人商標は、請求人が所有する商標として特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」における「日本国周知・著名商標検索」において掲載されるとともに、各種の辞典において四輪駆動小型自動車に付けられた愛称又は商標名として載録されており、また、遅くとも、平成27年7月から継続して各種の雑誌及び新聞において請求人商品が請求人商標とともに紹介又は広告されており、さらに、平成23年度から令和2年度における車名別輸入車新規登録台数において、請求人商品の台数及びシェアは、常に全体の上位を保っていること等が認められる。

 そうすると、請求人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る「四輪駆動小型自動車」を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているというのが相当である。

 また、請求人商標は、長年にわたる四輪駆動小型自動車についての使用状況に照らして、周知著名性の程度が極めて高いといえるところ、請求人商標は、遅くとも2021年5月には、店舗やウェブサイトにおいて販売される、「Tシャツ」「バックパック」「バッグ」「マグカップ」「弁当箱」「カラビナ」「キーホルダー」「スプレーボトル」「ハードコンテナ」「クーラーボックス」等、繊維、食器、運動具、収納容器といった幅広い分野の商品に付されて使用されており、これらの取引の実情を踏まえれば、その周知著名性は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、自動車以外の商品の取引者、需要者の範囲についても及んでいたものというのが相当である。

 2 商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)本件商標

 本件商標は、前記第1のとおり、「Jeeper」の文字を標準文字で表してなるところ、「Jeep」の欧文字に、接尾辞の一種であり、名詞などの語尾に付されることにより、「~に関係する人、~を愛好する人」等を表す「er」の文字を付加してなるものである。

 そして、「Jeep」の文字は、上記1のとおり、請求人の業務に係る「四輪駆動小型自動車」を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものである。

 そうすると、本件商標は、その構成中の「Jeep」の文字部分が、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものといえる。

 してみると、本件商標は、その構成中「Jeep」の文字部分を抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許されるというべきである。

 そして、本件商標は、その構成中「Jeep」の文字部分から「ジープ」の称呼を生じるものであり、また、「Jeep」の文字は請求人の業務に係る「四輪駆動小型自動車」を表示するものとして需要者の間に広く認識されているから、「請求人の四輪駆動小型自動車のブランド」としての観念を生じるものである。

(2)引用各商標

 引用各商標は、別掲1ないし4のとおり、「Jeep」の欧文字又は「JEEP」の欧文字を一般的な書体で横書きしてなるものであるから、それぞれの構成文字に相応して、「ジープ」の称呼を生じるものである。

 また、上記1のとおり、「Jeep」の欧文字又は「JEEP」の欧文字は、請求人の業務に係る「四輪駆動小型自動車」を表示するものとして需要者の間に広く認識されているから、引用各商標からは、「請求人の四輪駆動小型自動車のブランド」としての観念を生じるものである。

(3)本件商標と引用各商標との類否

 本件商標と引用各商標との類否を検討するに、外観については、本件商標の要部である「Jeep」の文字部分と、引用各商標の「Jeep」又は「JEEP」の文字とは、いずれも一般的な書体で表され、大文字と小文字の差異はあるものの、つづりを全て共通にするものであるから、両商標は外観において近似した印象を与えるものである。

 また、称呼及び観念においては、両商標は、いずれも「ジープ」の称呼及び「請求人の四輪駆動小型自動車のブランド」としての観念を生じるものであるから、称呼及び観念を共通にするものである。

 そうすると、本件商標と引用各商標は、外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合してみれば、語尾の「er」の有無において相違するとしても、本件商標の要部である「Jeep」が、引用各商標と外観において近似した印象を与え、称呼及び観念も共通にすることから、商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれのある類似する商標というべきである。

(4)本件商標の指定商品と引用各商標の指定商品との類否  略

(5)小括

 以上のとおり、本件商標は、引用各商標と類似する商標であって、かつ、その指定商品中「チャコ削り器,手斧,ピザカッター(電気式のものを除く。),ピンセット,フォーク,ペディキュアセット,マニキュアセット,刃研磨用具,レーキ(手持工具に当たるものに限る。),革砥,缶切,大がま用砥石,靴製造用靴型(手持工具に当たるものに限る。),鋼砥,手動工具,手動利器,鋤,砥石ホルダー,組ひも機(手持工具に当たるものに限る。),電気かみそり及び電気バリカン,電気アイロン,砥石,エメリーボード,ナイフ用鋼砥,かつお節削り器,回転砥石(手持工具),くわ,金剛砂製グラインダー,研磨用具(手持工具に当たるものに限る。),研磨用鉄砥,ひげそり用具入れ,まつ毛カール器,エッグスライサー(電気式のものを除く。),スプーン,手動式スキーエッジ用研ぎ具,チーズスライサー(電気式のものを除く。)」は、引用各商標の指定商品と同一又は類似する商品である。

 したがって、本件商標は、その指定商品中、上記指定商品について、商標法第4条第1項第11号に該当する。

 3 商標法第4条第1項第15号該当性について 略

 したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効にすべきものである。(下線・着色は筆者)』(無効2022-890064)。

 

<所感>

本件商標は、引用商標1-8(上記四角枠内には引用商標1のみ示した)がその使用により周知性が認められ、これと類似すると認定され、商標法第4条第1項第11号に該当すると判断されている。また、商標法第4条第1項第15号にも該当するとしている。11号該当性に関して言えば、本件商標は引用商標「Jeep」にさらに「er」の欧文字を一体不可分に追加してなるから「Jeep」が周知であってもその類似範囲から脱すると看取ることはできなかったのであろうか?審決は「er」を接尾辞の一種と簡単に考えるだけであり、この論点についてあっさりと書き下している感がして物足りなさが残る。