本願商標が商品の品質を表示するとされた例 | SIPO

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審決例(商標):商3-1-3号該当性1

 

<審決の要旨>

『(1)商標法第3条第1項第3号該当性について

 本願商標は、「MUSCAT&LEAF」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中、「MUSCAT」の文字は「ブドウ品種の一つ。皮はうす緑色。大つぶで、あまみとかおりが強い。」を、「LEAF」の文字は「葉。」などを、それぞれ意味する平易な語であって、また、同構成中の「&」の記号は「「および」「そして」の意味で語を結んで、全体でひとつの語にすることば。」である「アンド(and)」の意味で一般に使用されるものである(出典はいずれも「三省堂国語辞典  第八版」株式会社三省堂)。

 そして、原審で提示した情報や、別掲2の情報にあるように、本願の指定商品を取り扱う分野において、商品の香りを表現するものとして、「MUSCAT」又は「LEAF」の語の読みを片仮名で表した「マスカット」又は「リーフ」の語が用いられている事例があり、また、2つの語を「&」の記号で結合したものが用いられている事例も少なからず見受けられるものである。

 そうすれば、本願商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、それが「マスカット及び葉の香り」という、商品の品質(香り)を表示したものと認識するにとどまり、自他商品の識別標識としては認識し得ないというべきであるから、本願商標は、その商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というのが相当である。

 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。

(2)請求人の主張について

 ア 請求人は、「マスカット」の文字は、ブドウの一種以外の意味合いで使用されることがよくあるため、通常「マスカット」の文字から直ちにブドウの芳香を想起するわけではない旨主張する。

 しかしながら、「MUSCAT」の文字、及び、その読みを片仮名で表した「マスカット」の文字は、「ブドウ品種の一つ」を意味する語として我が国において広く使用され、理解されているものである上、原審提示の情報にあるように、本願の指定商品との関係においては、当該ブドウを想起させる(当該ブドウの香りをイメージした)商品の香りを表現する語などとして使用されている実情があるのに対し、同文字が、請求人が審判請求書において挙げる「オマーン国の首都」や「テレビ番組の情報を知らせるウェブサイトの名称」を意味する語として、我が国において広く使用され、理解されているという実情は見当たらず、それらの意味と本願の指定商品とに直接的な関連性も見いだせないことからすると、本願商標構成中の「MUSCAT」の文字は、本願商標に接する取引者、需要者において、「ブドウ品種の一つ」を意味する語として理解され得るものというのが相当である。

 イ 請求人は、本願商標は、その構成態様から「マスカット(というブドウの品種)とその葉」の意味に解するのが自然であって、マスカットの葉は、芳香を有してないため商品の香りを表示するものとして使用されておらず、また、本願商標の構成には「香り」を意味する文字は含まれていないことからすると、本願商標は、「マスカットの香りとリーフ(葉)の香り」の意味合いで認識されるとはいえず、実際の商品取引の場においても、「MUSCUT&LEAF」の文字が商品の品質(香り)を表示するものとして広範かつ普遍的に使用されている事実は存在しない旨主張する。

 しかしながら、本願商標の構成中の「&」の記号は、通常、その前後の語を同等に並列するために用いられるものであって、そのことは、別掲2の情報中(3)ないし(10)の使用事例からも明らかであるから、同構成中の「LEAF」が「マスカットの葉」を意味するという請求人の主張は、妥当とはいえず、また、同使用事例にあるように、商品の香りを表現するものとして、2つの語を「&」の記号で結合したものが、「香り」などの文字を伴わずに用いられている実情があることからすれば、本願商標の構成中に「香り」などの文字が含まれないことをもって、本願商標が商品の香りを表示するものとして認識されないということもできない。

 そして、上記(1)のとおり、本願の指定商品を取り扱う分野において、商品の香りを表現するものとして、「MUSCAT」又は「LEAF」の語の読みを片仮名で表した「マスカット」又は「リーフ」の語が用いられている事例があることからすれば、「MUSCUT&LEAF」の文字が商品の品質(香り)を表示するものとして一般に使用されている事実が見当たらないとしても、本願商標をその指定商品に使用したときは、これに接する取引者、需要者は、それが「マスカット及び葉の香り」という、商品の品質(香り)を表示したものと認識するというのが相当である。

 ウ 請求人は、過去の商標登録例を挙げ、それらと同様に本願商標も登録を認められるべきである旨主張する。

 しかしながら、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであるか否かの判断は、当該商標登録出願の査定時又は審決時において、当該商標の構成態様と指定商品・指定役務との関係や、その商品又は役務の分野における取引の実情をも踏まえて、個別具体的に判断されるべきものであるところ、請求人の挙げた登録例は、商標の構成態様が本願商標とは異なるものである点において、本願とは、事案を異にするものというべきであり、また、過去の登録例が存在することをもって、上記判断が左右されるものではない。

 エ したがって、請求人の上記アないしウの主張は、いずれも採用することができない。

(3)まとめ

 以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、登録することができない。(下線・着色は筆者)』(不服2018-15721)。

 

<所感>

上記の通り、本願商標の指定商品を取り扱う分野において、商品の香りを表現するものとして「MUSCAT」又は「LEAF」の語の読みを片仮名で表した「マスカット」又は「リーフ」の語が用いられている事例があり、また2つの語を「&」の記号で結合したものが用いられている事例も少なからず見受けられるものであるとすれば、商標法第3条第1項第3号該当性を否定することは難しいであろう。しかし、審決もかなり強引な論旨ではあるが・・