商標が類似とされた例 | SIPO

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審決例(商標):類否137

 

<審決の要旨>

『(1)本願商標

 本願商標は、別掲1のとおり、黒い四角形を背景に、上から順に、○で囲んだ「E」の文字、「TRUNG NGUYEN」、「ENERGY CAFE(最後の「E」の上にアクセント記号がある。以下同じ。)」の文字を表し、「ENERGY」の文字の下に「NANG LUONG」の文字を表し、下段に上下に横線を配した「THE No.1 COFFEE!」の小さめの文字を、いずれも白抜きで表してなるものである。

 そして、中央部分に位置する「TRUNG NGUYEN」の文字は請求人の名称の一部であるが、ベトナム語の表記方法をもって表されていることから、我が国の一般的な需要者にとっては、例え一部のオンライン辞典に掲載されている文字であるとしても、ベトナム語の読み方に倣って「チュングエン」と称呼できるものとはいい難く、その他の読み方によっても称呼し難い文字である。

 これに対し、「ENERGY CAFE」の文字部分は、「ENERGY」の文字と「CAFE」の文字の大きさに多少の差異があるものの、それぞれ「活力」等を意味する文字及び「カフェ、喫茶店」を意味する文字として、我が国において親しまれたものであるから、その構成文字に相応して「エナジーカフェ」又は「エネルギーカフェ」の称呼が無理なく生じるものといえ、本願の指定商品及び指定役務との関係において、出所識別標識として機能し得る部分である。

 また、「ENERGY」の文字の下に表された「NANG LUONG」の文字は、英語の「ENERGY」に相当するベトナム語であるが、他の文字より背景とのコントラストが弱く、看取しづらいことに加え、ベトナム語を解さない一般的な我が国の需要者にとって、当該文字が有する意味及び「ナン ルオン」と発音されることを容易に理解できるものとはいえない。

 さらに、下段の「THE No.1 COFFEE!」の文字は、他の文字に比べて小さく表されている上、コーヒーに関連する本願の指定商品及び指定役務との関係においては、商品及び役務の品質、質を表すものであるから、出所識別標識としての機能が弱い部分であるといえる。

 そうすると、本願商標に接する取引者、需要者は、その構成中、親しまれ、称呼しやすい「ENERGY CAFE」の文字部分に着目し、これより生じる「エナジーカフェ」又は「エネルギーカフェ」の称呼をもって取引に資する場合がむしろ多いものというのが相当であるから、本願商標から「ENERGY CAFE」の文字を抽出し、この部分を他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許されるというべきである。

 よって、本願商標は、「ENERGY CAFE」の文字部分が要部であるといえ、当該文字部分より、「エナジーカフェ」又は「エネルギーカフェ」の称呼が生じ、「活力のあるカフェ」程度の観念的な意味合いを理解させるものである。

(2)引用商標1  略

(3)本願商標と引用商標1の類否

 本願商標の要部と引用商標1とを比較すると、綴りにおいて「ENERGY」の「Y」と「ENERGIE」の「IE」の相違、「CAFE」と「cafe」の文字のうち、「E」と「e」の上のアクセント記号の向きに相違があるものの、その余の文字を共通にするものであるから、外観上類似するものというべきである。また、全体を比較した場合でも、両商標ともに黒い四角形を背景に白抜き文字で表されている点において、外観上、似かよった印象を与えるものといえる。

 そして、本願商標の要部と引用商標1は、ともに「エナジーカフェ」又は「エネルギーカフェ」の称呼が生じ、「活力のあるカフェ」程度の観念的な意味合いを理解させるものである。

 そうすると、本願商標と引用商標1は、それぞれの外観、称呼及び観念を総合的に考察すると、これらよって取引者、需要者に与える印象、記憶及び連想等を総合して、全体的に考察すれば、相紛れるおそれのある類似の商標といわなければならない。

(4)本願の指定役務と引用商標の指定役務の類否  略

(5)請求人の主張について

 請求人は、本願商標の構成中「TRUNG NGUYEN」の文字は、英辞郎にも掲載されている「チュングエン社(ベトナムのコーヒーチェーン店)」のことであるから、ベトナムコーヒーに精通している取引者・需要者には目にとまりやすく、「チュングエン」「チュングエン エナジー」「チュングエン エナジー カフェ」と称呼される割合が高い旨主張する。

 しかしながら、我が国の一般的な需要者にとっては、ベトナム語の読み方に倣って「チュングエン」と称呼できるものとはいい難く、その他の読み方によっても称呼し難い文字であることは、前記(1)のとおりであり、また、本願の指定商品及び指定役務の需要者はベトナムコーヒーに精通している取引者・需要者に限られるものではないから、請求人の主張は採用できない。

(6)まとめ

 以上によれば、本願商標は、引用商標1と類似する商標であり、かつ、その指定役務も引用商標1の指定役務と同一又は類似のものである。

 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録することができない。(下線・着色は筆者)』(不服2021-650064)。

 

<所感>

請求人の主張は本願商標の称呼に関し自国語論を展開しており、これでは採用し難いところであろう。また、審決に関しては外観類似とする範囲を広く解釈していると感じ、このような論法でも外観類似となるのかと驚いた。そういう意味ではこれから出願する者にとっては参考になる事案と思う。