商標が非類似とされた例 | SIPO

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審決例(商標):類否135

 

<審決の要旨>

『(1)本願商標について

  本願商標は、角括弧[]の中に太字で「XTX」の欧文字を配し、その下の中央に小さく「MARKETS」の欧文字を横一連に書した構成よりなるものであるところ、「[XTX]」の部分は、下段部分と比較して極めて大きく顕著に表されていることから、看者の注意を最も強く引く部分といえる。

  そして、「XTX」の文字は特に辞書等に載録のない造語であり、「MARKETS」の文字は、「市場」(「ランダムハウス英和大辞典第2版」株式会社小学館)等の意味を有する「MARKET」の複数形であり、両文字は、観念的な一体性も見いだせない。また、本願商標の構成のうち、角括弧の部分については、原審で説示されたとおり、「括弧」が「数式や文章の中で、ある部分をかこって、他との区別を明らかにするための記号」(株式会社岩波書店「広辞苑第七版」)と位置づけられていることよりすれば、括弧内に顕著に表された「XTX」の文字部分を視覚的に際立たせるためのデザインと捉えるのが自然であり、それ自体は自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものというのが相当である。

  そうすると、本願商標は、構成全体から生じる「エックスティーエックスマーケッツ」の称呼のほかに、極めて大きく表された「XTX」の文字部分に相応して、「エックスティーエックス」の称呼を生じるものであり、特定の観念は生じないものである。

(2)引用商標について

  引用商標は、「X」と「T」を想起するややデザイン化された欧文字の横に、肉太の斜線にクロスさせるように半円状の弧を描くようなデザインが施された図形を組み合わせた構成よりなるところ、当該図形部分は、1文字目の「X」を想起する文字の一部とデザインの類似性が見られることに鑑みれば、「X」の文字を基礎に図案化したものと看取され得るものである。

  そうすると、引用商標を「XTX」の文字と認識した場合には、「エックスティーエックス」の称呼が生じることは否定できず、また、当該文字は、辞書等に載録のない造語であるから、特定の観念を生じないものである。

(3)本願商標と引用商標との類否について

  本願商標と引用商標は、それぞれ上記(1)及び(2)のとおりであるところ、両者は、全体構成において、また、独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得る本願商標の各部分との比較においても、顕著な差異を有するものであるから、外観において相紛れるおそれはない。そして、称呼については、本願商標及び引用商標は、「エックスティーエックス」の称呼を共通にする場合があり、観念においては、いずれも特定の観念を生じないものであるから、比較することができない。

  そうすると、本願商標と引用商標とは、観念において比較することができず、称呼において、「エックスティーエックス」の称呼を共通にする場合があるとしても、外観において顕著に相違し、その外観における差異は称呼上の類似性を凌駕するといえるものであるから、外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は、これを同一又は類似の商品に使用しても、商品の出所について混同を生じるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当である。(下線・着色は筆者)』(不服2022-13840)。

 

<所感>

審決は両商標の称呼類似を認めつつも(観念は比較できないとしている)、外観において顕著に相違するから全体として非類似であるとした。明らかな外観優先の決定である。引用商標の最後の文字がXを変形し図案化したものであるとはいえ、前の二文字との関係からは図案化の文字はXであることは容易に想像がつく。取引者・需要者であれば混同するのではないだろうか。