「蒼宮の惑星」惑星間転生の物語 

 第三章 人類存亡の危機ーアトランティスー 12



そこに聳える白亜の神殿は、古代アトランティスの首都ポンティスにありて、多くの民の訪いで一際華やいでいた。
 路端に軒を連ねて商う人達の脇を、ジークとリーナが通り抜けて行く。
アゴラに溢れる民衆の弾ける笑顔が、天上から降り注ぐ太陽の光を一杯に受けて、輝いていた。
 間もなくアガシャー王のお話が、神殿奥の黄金のピラミッド内で始まろうとしている。
 講堂内には10万人の神を愛し信仰する敬虔な人々が列をなし、膝を折って中央に奉られたヘルメス神像前に頭を垂れ、アガシャー王の登壇の時を今か今かと待ち構えていた。
 ジークとリーナも王のご登壇を見守る為に、最前列で待機していた。
 穏やかで小春日のような目許に笑みを浮かべたその方の姿が壇場に現れると、場内から大きな拍手が起き、愈々アガシャー王のお話が始まった...
 
 王の穏やかな声音と暖かい言魂は、光の粒となって民衆の心を温め、日頃のしがらみで溜まった煩悩を浄め、凝り固まって疲れ切った心を解きほぐし癒やして行った。
 民衆の顔面に灯る明るい笑顔が場内を満たすと、その時を待たれていたかのようなアガシャー王のたおやかで温かな笑みが溢れ、満場の拍手の中お話は終わった。
 その日も、アトランティスは平和で、黄金ピラミッドの頂点より流れ入る天上の神の光を、全身に浴びるように頂く幸せな笑顔溢れる民衆の姿が王の面前にあった...
 これが、アトランティスのもう一つの世界、パラレルワールドでの1日であった。

ジークとリーナは、つくづく思う。
(2024年の日本は、救世主までご降臨賜っていたというのに、35年以上の時間を経ても未だ信仰が立たず、裏宇宙からの介入や、あの世の存在を信じぬが故に地上から霊界へ帰還できず、結果として地上での不成仏霊が急増、益々天災や人類滅亡へのカウントダウンが加速している。
 この国は本当に「アトランティス」の二の舞いになるのか?
  いったい私達はあのアトランティスで、どのようにすれば滅亡の危機を回避できたのか〜?)と。

    2024年軸でのアトランティスでは、理神論派との壮絶な戦いの果てに、暴徒集団による王族襲撃、天の怒りに触れたアトランティスは、一昼夜で海中に没し去った。