「ありがとうアイリ。友達っていいわね」

話を聞き終わると、ユナは嬉しそうに笑いました。

 話し疲れたのか、

アイリはユナが用意してくれたお水をおいしそうに飲んでいます。

 そして思い出したようにユナに詰め寄りました。

「洞窟には行かないでって言ったのに、どうして約束破ったりしたの?」

ユナは申し訳なさそうに謝り、

 ちゃんと話すからと言って、

部屋の隅にある棚から古い本を取り出してきました。

「それ、なぁに?」

アイリが覗き込むと、

黄ばんでいて中には自筆でなにか書かれていました。

「昔の人の日記よ」

ユナは椅子を動かして、アイリの隣に座りました。

「日記?誰の?」

「それはわからないけど、

 昔の村人のものよ。

ちょうど長老が話していた、吸血鬼がいた時代のことがかかれてるの」

アイリは驚きました。

「そんなの、どこにあったの?」

「蔵を掃除したときに見つけたの。

すごく崩してあって読みにくかったから、

 全部読むまで時間がかかったわ」

ユナは楽しそうに言いました。

 
 アイリは不思議に思いました。

「こんなの、読めたの?」

文字に見えないこともありませんが、

アイリにはミミズが這った跡のようなものにしか見えませんでした。

じっと見つめても、全く読めません。

アイリの様子がおもしろかったのか、

ユナは声を出して笑いました。

「そんなふうには読めないわ」

「どういうこと?」

ユナは貸してと言って本を受け取り、鏡を取り出しました。

「こうやって読むのよ」

鏡で文字を映し出し、アイリにも見えるようにしました。

「あっ」

アイリは声をあげ、ユナを見ました。

「すごい!ちゃんと読める!」

 鏡に映った文字を見ると、反転して普通の文字に見えました。

「これに気がつくまで大変だったのよ。

 全然読めなかったから、捨てちゃおうかと思ったわ」

ユナはペろりと舌を出し、

ページをめくりました。

茶目っ気のある表情に、アイリはつられて笑いました。

「じゃあ、読んであげるわね」

探していたページを見つけたのか、ユナは日記を朗読し始めました。