アイリには親友がいました。

ユナという優しい女の子で、アイリはユナが大好きでした。

ユナは吸血鬼のお話を聞いてから、

吸血鬼と娘さんの話ばかりしていました。

「ねぇアイリ、吸血鬼って本当にいるのかしら?」

 アイリは首を傾げました。

「みんないるって言ってるから、いるんじゃないかなぁ?」

「いるのかどうか確かめてみたいわ」

 目を輝かせてそんなことを言うユナを見て、

アイリは慌てました。

「だめだよ、危ないから。もし吸血鬼がいたら、帰ってこられなくなっちゃう」

 アイリの慌てた様子を見て、ユナは笑いました。

「冗談よ」

 それを聞いてアイリは安心しました。

絶対に洞窟に近づかないように約束して、

 二人は手をつないで家に帰りました。

 しかし、吸血鬼のお話を聞いてから数日後、

ユナはいつの間にかいなくなっていました。

村人たちは必死に探しましたが、見つかりませんでした。

 アイリは不安になり、

村の大人たちにユナが吸血鬼がいるかどうか

確かめたがっていたことを話ました。

 話を聞いた大人たちは顔を見合わせ、アイリに言いました。

「もしそうなら、諦めるしかないよ」

アイリは呆然としました。

そして、大人たちを頼れないことがわかり、

なにも言わずに家に帰りました。