家族関係の親密なところが日本をはじめ、アジアの家族を大事にする象徴だったが、残念ながら日本ではとうにその名残は失われている。わが子への虐待、息子の両親への家庭内暴力、そして今回起きた事件が孫の祖父母殺傷事件である。

 

埼玉県和光市の、あるマンションの一室で15歳の孫が85歳の祖父をナイフで殺害、祖母に重傷を負わせる事件があった。逮捕された中学3年生の孫は、「学校に殺したいほど許せない生徒がいるが、(自分の)家族に迷惑がかかるので、まず家族全員を殺してからにしようと思った」という主旨の供述をしているというから呆れた。

 

「家族に迷惑がかかる」という配慮をみせながら、「殺害」という残忍な行為に対し、同情の気持ちも全く感じられないところが異常である。こうした凶悪犯罪をまるで蚊やトンボなどの昆虫を殺すような感覚で行ってしまうのが今の若年層の「怖さ」である。そこには命の大切さ、人間の体内には赤い血が流れていることなど全く頭にないように思われる。

 

高度経済成長に伴い核家族化が急速に進み、3世代が一緒に住む家族がほとんどなくなった。食事も家族と一緒に取ることなくなり、個室に閉じこもる時間が長くなったために親子の関係も希薄になっている。一日のうち仕事に忙しい両親とのふれあいよりスマホやパソコン相手の時間の方がはるかに多い子供たちは、様々な情報を与えてくれる通信機器に心を奪われ、人間として一番大切な感動や感謝の「こころ」を忘れてしまったことが要因の一つだと思う。