- 日本人になりたい在日韓国人/朝日ソノラマ
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在日を抜きにして今の日本は語れないと言われるくらい芸能・スポーツ・財界に在日の存在感は大きい。亡くなってからすでにかなり経つのに人気の衰えを知らない美空ひばり、プロレスの力道山、先日引退を表明した金
本知憲、そして実業界の成功者ロッテの重光武雄、ソフトバンクの孫正義。
日韓サッカー共催、韓流ブームで差別意識はなくなったが、戦後間もない頃は苦労した在日は少なくなかったようだ。1960年福岡県北九州市に在日朝鮮籍の父と韓国籍の母の元に四男として生まれた岩本光央(李仁植)もその一人だ。
彼が生まれた翌年、「北朝鮮は楽園」「祖国再建に力を」というキャンペーンに乗って北朝鮮国籍の父親が帰国を促すが母親は拒み、結局母子5人が日本に残った。幼子を含む4人の子供を抱えた母は飯場やクズ鉄集めなどして昼夜働いた。
岩本少年も小学校高学年になると自分が在日であることを強く意識するようになり、知られたくないという気持ちが強くなる。しかし中学生になり柔道場に通ったりして自分に自信と自我が目覚めてくるようになるにつれてそれほど在日かどうかは気にならなくなる。ただ女の子に対しては硬派でどうしても在日であることが言い出せなかった。
岩本少年が高校に上がろうとするとき、母親が頼母子講で大きな借金をかかえ夜逃げして広島の原爆ドームの近くの川沿いバラックに住んだこともあった。そういう母子家庭で育った彼は自ずと生きる術を身につけ、社会に出ても居酒屋や焼き肉屋とバーを兼ねた店を手掛けるなどたくましく処世術を発揮している。
李一家をめぐる話題だけでも一つのストーリーができるほど話題が尽きない。彼には一家の悲劇もパロディーにしてしまうようなユーモアと芯の強さがある。それでいて女性にはピュアで率直な一面があるためよくモテる。タイトルの「日本人になりたい」というなら帰化すれば簡単なことではないか、という意味ではなく、愛のためなら国籍も名前もいとわないという気持ちからだという。
民族意識に凝り固まった在日一世と違い日本で生まれ、日本の環境にどっぷり浸って育った在日は寧ろ祖国に留学して初めて自分が韓国人でないことを知るという。環境が人を育てるというのはそこから来ている。ブラジルの日系人にも言えることで、顔は日本人そのもだが、中身は全くのブラジル人だ。
日本サッカー代表の在日四世で今イングランド2部リーグサウサンプトンに所属する李忠成の『生まれ育った日本のために』という著書があるが、韓国代表を夢見た李が韓国チームで受けた余所者扱いが自分を、このタイトルにあるような気持ちにさせた、という。李忠成、岩本光央祖国がどこであれ、生まれた土地、国に愛着を持ち、そこの国民としてたくましく生きようとする気持ちがあれば、日本人の一人として私はこころから応援したい。