原因食物を加熱すれば大丈夫とは限らない
多くの方が、誤解を抱いていることがあります。
それは、「原因食品でも加熱すれば
アレルギー反応を引き起こさない」ということです。
食物の成分は、唾液や胃液、
腸液などによって細かく分解され、
小腸に到達するまでに消化されます。
しかしながら、
それでも腸管で吸収された際には
異物として認識されるため、
原因となるタンパク質は、
非常に強い酸性やアルカリ性の
消化酵素にも耐えうる強固な構造を持っています。
そのため、加熱しても容易に壊れません。
例えば、卵アレルギーを持つ方でも、
加熱された卵は食べられることがあるかもしれません。
これは、卵のタンパク質が比較的壊れやすい構造を
持っているため、
加熱によって壊れることがあるからです。
ただし、これは鶏卵などごく一部の食品に
限られた特徴であり、
多くの食物にとって、
加熱は低アレルゲン化の有効な方法ではありません。
したがって、食物アレルギーを持つ方々は、
原因となる食品を避けることが最善の対処法です。
また、食品のラベルをよく確認することや、
飲食店での注文時には
アレルギーについて説明することが重要です。
赤ちゃんの10人にひとりが発症
日本における食物アレルギーの有病率は、
全年齢層を通しておよそ1~2%程度と推定されています。
小児(15歳以下)では特に乳児(1歳以下)に多く、
およそ10人に1人が発症しているとされています。
近年、食物アレルギーに関する研究が進み、
データの整備が進んでいるものの、
まだ確固たる数値は得られていません。
私が診療している中でも、
患者数が年々増加している印象を受けます。
この傾向については一概には言えませんが、
食生活の変化により、
アレルギーを起こしやすい食品を
多く摂取するようになったことが原因の一つと考えられます。
例えば、日本ではかつてキウイフルーツは
食べられていませんでしたが、
1980年代後半から普及し始め、
その消費量が増えたために、
キウイフルーツアレルギーの患者数が
急増したと考えられます。
同様に、近年は保護者が子供にいくらを
食べさせるようになったため、
1~2歳児のいくらアレルギーが増加しています。
本来、小児はアレルギーを発症するリスクが高いため、
いくらは発症頻度が高い食品の一つです。
そのため、小児に与える食品を選択する際には、
少しでも発症を予防するために注意が必要です。
食物アレルギーは乳幼児期に
発症した場合は治りやすい
食物アレルギーを
発症してしまったら?
注意すべき表示法の対象外
加工食品に定められたアレルギー表示
食品衛生法に基づき、
平成13年から加工食品のアレルギー表示制度が
法律で定められました。
表示の義務は、微量でも発症頻度が高いか、
重篤な症状を引き起こしやすい食物を含む場合に生じます。
これは、消費者が食品に含まれるアレルゲンに気づくことが
できるようにするためです。
現在は、表示が義務づけられている特定原材料が
7品目あり、また表示が推奨されている原材料が
21品目※あります。ただし、
表示の義務がある特定原材料以外の食品
表示が推奨されている原材料を含む)は、
加工食品に含まれていても表示されない可能性があるので、
個々での確認が必要です。
また、アレルギー表示には、
アレルゲンと表示が類似しているために誤解しやすい、
紛らわしい表示があります。
例えば、「卵殻カルシウム」は卵の殻を加工したもので、
焼成・未焼成ともに卵タンパクの残存は
無視できる程度ですので、
除去は基本的に不要です。
また、"乳"の文字がついていても、
「乳化剤」や「乳酸ナトリウム」は牛乳とは
関係のないものです。
これらは、卵や牛乳に対して食物アレルギーが
あったとしても食べることができます。
誤解しないようにしていただきたいと思います。
加工食品のアレルギー表示対象品目
(推奨表示)
加工食品のアレルギー表示
紛らわしい表示例
乳化剤、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、乳酸菌